研究課題/領域番号 |
20K12935
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
古矢 篤史 摂南大学, 外国語学部, 講師 (90747966)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日本近代文学 / メディア史 / 横光利一 / 婦人雑誌 |
研究実績の概要 |
2021年度は、主に、日中戦争開戦の前と後の言説比較を中心に調査と分析を行った。日中戦争前については、主として満州事変・第一次上海事変後のいわゆる「事変下」の言説形成を確認し、1937年の日中開戦に至るまでのプロセスを検証した。前年度から今年度前半にかけての成果をまとめ、査読付き論文「「生活合理化」に抗する文芸戦略――『婦人之友』と横光利一「時計」に見る一九三〇年代の〈時間〉表象――」を発表した(『国語国文』2021年11月)。事変下において銃後の女性のジェンダー規範が更新されていくことが分かり、次に、それが日中開戦に伴って戦時下のジェンダー規範にどう接続されるかを問う課題検証を進めた。盧溝橋事件を跨るかたちで『主婦之友』に連載された横光利一「春園」を改めて検証し、「銃後」において女性の戦時下の社会進出が婦人雑誌のなかでどのように表象され、それに対して文学作品がどのように呼応されていくかの検討が必要であると判断した。婦人雑誌の編集方針と、文学者の思考は、相互に補完しあう関係を保ちつつも、必ずしも一致しない見解の齟齬が見られる。婦人雑誌の分析とともに、横光を中心とした開戦下の文学者の反応を辿り、長篇小説「春園」の女性登場人物が開戦直後の時局の求める女性像とは異なる側面をもつことを確認した。これらの点について、2021年9月11日に研究内容の報告を行った(摂南大学国際文化セミナー)。以上の論考をまとめた論文を2022年度に発表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査は予定通り進んでおり、本年度に調査した内容もすでに論文にまとめる段階である。次年度は最終年度になるため、これまでの調査結果を踏まえ、アジア・太平洋戦争下の婦人雑誌と連載小説についての研究をまとめ、本課題で予定していた調査対象の期間の渉猟を終える見込みである。但し、本年度も新型コロナウィルスの影響により調査や会合が制限されたことで、代替手段による実施を余儀なくされたこともあった。よって「おおむね順調」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となるため、これまでの研究結果をまとめ、論文および作成したデータベースの公開に注力する予定である。なお、本年度も出張調査や会合が制限されることも予想されるため、文献収集による調査を重点的に行う方針で進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で調査や会合のための出張が制限され、文献収集による調査を中心に行ったことにより、当初予定の使用額との差異が生じている。次年度も同様な支出が想定され、次年度使用額はこれに使用する。
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