研究課題/領域番号 |
20K12937
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研究機関 | ノートルダム清心女子大学 |
研究代表者 |
野澤 真樹 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 講師 (90802900)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 近世文学 / 滑稽本 / 大阪騒壇 / モデル小説 |
研究実績の概要 |
2020年度は「河太郎物」の書誌調査のための出張を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の流行による出張自粛の要請があり、ほとんど叶わなかった。そのため、予定を変更して①作品そのものの精査と②作品成立の背景の解明を優先的に行うこととした。 ①に関しては、未翻刻の河太郎物『通者茶話太郎』の翻刻と注釈に取り組み、巻一・二に関する成果を発表した(『鯉城往来』第23号「『通者茶話太郎』巻一・二翻刻及び略注」)。加えて、巻三から五についても現在継続中である。当初、鉄格子波丸、佐藤魚丸の「河太郎物」を調査の中心とする予定であったが、もう一つの「河太郎物」である『絵本胆太郎夢物語』に関しても波丸、魚丸同様に狂歌師の関与が推測されることがわかり、現在翻刻および注釈を進めている。 また、②に関し、鉄格子波丸作の「河太郎物」2作品(『戯動大丈夫』『通者茶話太郎』)に発句および狂歌を寄せる人物の調査を行い、それぞれ作品に関わる人物が異なることが明らかになった。それぞれの作品に俳諧師、狂歌師の関与が確認され、とくに鉄格子波丸の『通者茶話太郎』については、他の「河太郎物」と関与する人物に重なりが見られることが判明した。この成果については2021年度に研究発表を行い、論文化する予定である。 ①および②の調査の課程では、「河太郎物」の本文に登場する人物が実在人物をモデルとすることも判明した。このことについても、とりわけ読者にモデルが明示されている人物について調査を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究手法として、書誌調査をもとに「河太郎物」の享受の様相を解明することを目指していたが、所蔵期間への出張が叶わず書誌調査に関しては大幅に遅れている。一方で作品の成立背景の調査については一定の進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初の予定を変更し、「河太郎物」の成立背景及び本文の精査を優先的に進める。具体的には、2020年度に行った各作品に登場する人物についての調査を継続する。「河太郎物」はほぼ全てが狂歌師による作品であり、当時の大阪の狂歌壇のありかたを調査することが必要と考えている。加えて、今後も未翻刻作品の翻刻・注釈を引き続き発表する予定である。当初予定していた書誌調査に関しては出張が可能になり次第、近隣の機関から逐次行いたい。 また、『大坂本屋仲間記録』に見られる「河太郎物」に関連する記述についても再検討の余地があると考えている。人物の調査と併せて進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は当該課題の初年度にあたるため、国内の資料所蔵機関での書誌調査のための旅費を計上していたが、新型コロナウイルス感染症拡大により県外機関への出張や、学会、研究会への参加がかなわず、旅費を使用することができなかった。また、勤務先での遠隔授業等対応によって上半期の調査予定が大幅に遅れ、資料の購入も進まなかった。 次年度使用額については、2020年度に購入予定であった資料の購入を進めるとともに、資料所蔵機関からの複写の取り寄せなどに宛て、また出張が可能になり次第予定していた機関での書誌調査を行いたい。
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