研究課題/領域番号 |
20K12940
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研究機関 | 尚絅大学 |
研究代表者 |
山本 歩 尚絅大学, 現代文化学部, 助教 (90755092)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 小説作法 / 文章世界 / 日本文章学院 / 日本近代文学 / 投書雑誌 |
研究実績の概要 |
1.明治後期~大正初期の投書媒体と小説作法言説の調査のため、新潮社の通信教育機関「大日本文章学会」及び「日本文章学院」(1898年~1923年)関連書を収集・分析した。創設者・佐藤義亮は1902年時点で「小説作法」を同機関の講義録の目玉コンテンツに据えようとしており、フィクショナルな文章の指導を常に意識し続けた媒体だと見なすことができる。 講義録、及び付録である投書誌『新文壇』(1908~1916年、以後、一般販売誌『文章倶楽部』に継承)の各言説は連携を見せつつ、「繁忙」な青年層を読者として想定した指導を展開している。小栗風葉「小説作法」における「観照」という作法は、単に自然主義文学の方法論が流用されているというよりは、読者のターゲティングに基づいて選択された時間の活用法だったと言えるだろう。他方、大正期に入ると風葉の「小説作法」と並行し、『新文壇』には小川未明の影響も見られるようになる。「感覚描写」という言葉のもと、未明をバイプレイヤーとしていく『新文壇』上の投書・選評については、近いうちに発表を行いたい。 2.日本文章学院と前後して台頭してくる投書雑誌『文章世界』(博文館)については、既に先行研究が複数存在するが、その文章指導と投書の内容に着目したさらなる研究が必要だと考える。文学雑誌としての同誌のグランドデザインが示されたのは1907年4月の増刊「文章の研究と作法」であったが、そこでは「小説作法」のみならず他ジャンルの文章作法においても、「頭脳」の修練が繰り返し説かれた。即ち認知情報処理的な発想に接近しつつ、修養主義とも結びつくこうした指導の在り方について、今後考察を深めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
計画段階においては、新潮社資料室をはじめ、日本近代文学館や国立国会図書館、および複数の大学図書館での資料閲覧を予定していた。しかし、新型コロナウイルスによる感染症の影響が続いていることで、大部分が中止を余儀なくされている。各大学図書館も学外者の利用を制限しており、『新潮』や『文章世界』など、基本的な資料の閲覧も難しい。複写請求や相互貸借で対応しているが、想定以上の時間と費用が生じ、計画変更を余儀なくされたため「遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
上記のような状況が好転した場合は、すみやかに2020年度に予定していた調査を行いたい。それが期待できない場合は、雑誌資料の検討が進展しないと思われるので、単行本における小説作法言説の分析に着手したい。場合によっては、2022年度に予定していた木村毅の『小説研究十六講』(1925)等の検討を繰り上げて行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定されていた旅費が、新型コロナウイルスによる感染症拡大の影響のため、支出されなかったため。また、図書館等での調査が行えないことから文献複写請求の必要性が高まり、次年度に大量の複写請求を行う予算として使用したいため。
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