研究課題/領域番号 |
20K12943
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
佐藤 元紀 千葉大学, 教育学部, 准教授 (40756516)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 日本詩壇 / 戦争詩 / 地方詩人 / 15年戦争 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、前年度までに収集ができていなかった「日本詩壇」の目次や記事を収集することを行った。今回の調査を進めるなかで、国立国会図書館、日本近代文学館、大阪府立中之島図書館以外に、山梨県立文学館が「日本詩壇」を蔵しており、通覧が可能なことが分かった。しかし、現地での調査はコロナ禍のため未だ行うことができていない。令和4年度以降で調査を行いたい。 また、「日本詩壇」にて中心的な執筆者の一人であった岡本彌太による「日本詩壇」掲載の詩篇や評論をすべて収集することができた。その上で、令和3年度は詩篇や評論の分析を進め、「戦時下における抒情―「日本詩壇」における岡本彌太の「琴歌」を巡って」というタイトルで第5回東アジア日本研究協議会国際学術大会にて発表を行った。 同発表では、戦場美化や国体賛美といった傾向を作って行った文学のルポルタージュ化に迎合するものとは異なるように見受けられる岡本彌太の詩篇、特に、「琴歌四種」(昭和10年11月)、「琴歌抄」(昭和11年10月)、「琴歌抄」(昭和16年12月)の三回に渡って「日本詩壇」に掲載された文語定型詩の「琴歌」を対象として検討を加えた。 同時代の文学に求められたルポルタージュとは距離を置き、個の強度な抒情を前面に押し出した彌太の「琴歌」詩篇が、盧溝橋事件や真珠湾攻撃が差し迫った同時代において文語定型を用いて抒情する行為によって、抒情詩に飢えた読者を単に満足させただけではなく、戦場の報告としての機能を強く打ち出す〈戦争文学〉を介して絶対化されてゆく戦場が見せる現実を相対化し得る試みとなり得たことを確認し、報告を行ったた。同発表の内容に関しては、令和4年度に論文化する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は、令和4度以降の実施予定としていた「日本詩壇」を中心とした岡本彌太作品の考察と評価を前倒しして行い、「日本詩壇」の全体像を捉えてゆく手掛かりとして、同誌において特異な位置にあった岡本彌太の詩篇と評論の検討を進めることができた。 また、当初予定していた総目次に関しては、『現代詩誌総覧 ⑤都市モダニズムの光と影Ⅰ』(平成10年1月、日外アソシエーツ株式会社)にて掲載されていることが判明したため、本研究では新たな総目次作成は行わず、目次の電子化のみを行うことに軌道修正した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、社会状況が許す限り「日本詩壇」の誌面調査を行うこととする。また、令和3年度に引き続き、岡本彌太の詩篇や評論を中心的な対象としながら、収集した資料の分析を継続して行う。その上で、編集者であった吉川則比古についても調査・研究を行ってゆく必要がある。 また、令和2年度調査にて確認された岡本彌太の資料の翻刻を令和3年度に完了したため、注釈作業を施しつつ、論文等で公開することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
資料調査に赴くことができなかったこと、また、学会がオンラインにて実施されたため、学会参加に伴う旅費が発生しなかったことにより、旅費として計上していた使用額が翌年度への繰り越しとなった。 令和3年度に生じた残予算に関しては、令和4年度の旅費等に補充する。
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