研究課題/領域番号 |
20K12946
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
長谷川 真史 東京学芸大学, 教育学部, 研究員 (40706769)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 中国古典文学 / 唐詩 / 楽府 / 唐代伝奇 / 物語 / 元シン〔禾+眞〕 / 唐代の女性 |
研究実績の概要 |
本研究では、まず準備稿として用意していた元シン〔禾+眞〕の「琵琶歌」に関する考察を進め、「琵琶歌」の表現に当時の音楽に関する説話集『楽府雑録』の記述と共通する部分が多く見られたことを明らかにした。論文の要約は以下の通り。 〔論文〕「元シン〔禾+眞〕「琵琶歌」解釈の再検討」(『中唐文学会報』第二十七号、2020年10月) 元シン〔禾+眞〕(779-831)の楽府「琵琶歌」は、琵琶の名手「管児」の琵琶の演奏を克明に描写した作品である。琵琶の名手を主題としているという点で、白居易の「琵琶引」 (『白氏文集』巻十二)に先行する作品として、その価値がつとに認められているものである。日本では星川清孝氏、中国では陳寅恪『元白詩箋証稿』に論考がある。星川、陳両氏ともに、元シン〔禾+眞〕「琵琶歌」と白居易「琵琶引」との影響関係という視点から比較検討しており、その先後関係、制作背景や表現上の類似点についても指摘がある。しかし、元シン〔禾+眞〕「琵琶歌」の本文解釈については、星川氏以来、十分に検証されているとは言い難い。そこで、本論文では、あらためて元シン〔禾+眞〕「琵琶歌」本文を再検討し、描写されるエピソードや演奏技法が『楽府雑録』の記事を基にする部分が多く含まれていることを指摘した。 また、元シン〔禾+眞〕「古決絶詞」に見える女性の描写について、当時の士大夫の女性観や伝奇小説に描かれる女性たちの振る舞い等との比較考察を通して、元シン〔禾+眞〕が中唐の女性たちをどのように捉え、楽府の物語世界に描こうとしたのかについて考察を進めた。これについては2021年度に論文としてまとめ、全国漢文教育学会に投稿予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の予備稿として準備していた論文「元シン〔禾+眞〕「琵琶歌」解釈の再検討」は予定通り発表することができたが、今般のコロナ禍における研究環境の制限により、研究活動、及び研究成果の発表に支障が出たため、本稿のみでは十分に考察できていない部分もある。 また、2020年度に全国漢文教育学会『新しい漢字漢文教育』に論文を投稿予定であったが、加筆修正のため、2021年度に改めて投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度には、まず全国漢文教育学会『新しい漢字漢文教育』に論文「元シン〔禾+眞〕「古決絶詞」に見える中唐士大夫の恋愛観(仮題)」を投稿する。(2021年6月末予定)本論文では、元シン〔禾+眞〕の楽府作品「古決絶詞」の分析を通して、男女の恋愛を主題として女性の視点から描かれる女性の物語から、中唐士大夫の恋愛観を考察するものである。 また、「琵琶歌」「古決絶詞」の論考において十分に考察しきれていない点については、『東京学芸大学紀要(人文社会科学系)』に補足稿を準備する予定である。(2021年8月末)
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次年度使用額が生じた理由 |
今般のコロナ禍のため、学会が中止もしくはオンライン開催となり、学会参加費や旅費の使用が無かった。 今年度も同様の状況が続くことが予想されるが、学会のオンライン開催などに対応するため、パソコンやタブレット、通信機器を充実させる。
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