20世紀半ば以降中国語圏はイデオロギーに二分され、文学研究もその影響を受けてきた。だが今日、国民国家の枠組みを超えた「中国語圏文学」の研究が世界的に行われている。中国という中心に対し、辺縁に置かれてきた華人文学の意義に目を向けることは、華人文学の再認識に有益であるのみならず、言論統制の厳しさを増す中国を含めた中国語圏文学研究、ひいては中華圏の文化、社会に対する認識をより豊かなものにする可能性をもっている。本研究は馬華文学の起源を20世紀初頭とし、現行の議論の中で馬華文学が生成される過程を検討した。まだ研究半ばではあるが、世界的な中国語圏の社会に関する研究の潮流に資するものとなったと考えられる。
|