研究課題/領域番号 |
20K12961
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
田畠 健太郎 三重大学, 人文学部, 講師 (10837305)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アフリカ系アメリカ文学 / エンパシー / 共感 / 感情移入 |
研究実績の概要 |
当該年度は渡米してアメリカの大学図書館や研究所において資料調査をしその成果に基づいて研究成果を出すことを中心的な研究活動として計画していた。しかしながら、新型コロナ感染症の影響で実施できなかったので、渡米調査は次年度以降に繰り越すこととした。結果として、代替的に、オンラインでできる資料収集ならびにそれら資料の精査と、実地調査を必要としないエンパシー理論面での研究を深める方向へと計画を修正した。前者については、今後の(可能であれば)実地調査の成果と合わせて研究発表ならびに論文化する予定であるため、成果としては準備中であり、次年度以降に発表する計画である。後者の方向については、エンパシーをはじめとする道徳感情の政治力学を文学に関わる形で理論化している、現代アメリカを代表する哲学者マーサ・C・ヌスバウムのエンパシー理論の検討を中心に取り組んだ。その成果は、三重大学英語研究会発行のPhilologia52号(2021年3月)に「小説のエンパシー理論II――Martha C. Nussbaumのエンパシー理論の検討――」(pp.31-57)として論文化した。ヌスバウムの考えている「小説」概念が狭く、すべての小説について説明できるわけではないという理論的限界や、エンパシーの肯定的な面ばかり着目し否定的な面についての検討が不足しているなどの問題を抱えつつも、彼女の理論がある程度は有効であることを確認した。 エンパシーの理論的検討は、次年度以降の、リチャード・ライト、ジェームズ・ボールドウィン、ゾラ・ニール・ハーストンらの作品におけるエンパシーの表象戦略を検討する際に役立てる。また、実地調査ができるような状況になれば、自伝的要素や同時代の社会的言説を関わらせ、より歴史社会的な文脈から文学のエンパシーの機能を検討する作業に切り替える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年は新型コロナ感染症への対応としてのオンライン授業の準備や子供の出産・養育などで落ち着いて研究できる時間を確保するのが困難だった。また、本研究は、計画では、アメリカの図書館や研究所での資料調査を行う予定が組み込まれていたのだが、同感染症の影響で渡米することができなかったため実施できず、研究の方向性を多少修正することになった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、引き続き渡米不可能な状況が続くことも考慮に入れて、まずは実地調査にあまり依存しないで済む理論的作品解釈の方向で先に成果をあげつつ、実地調査が計画最終年度までずれこむ可能性も視野に入れて研究を進める。具体的には、当該年度のエンパシー理論検討の成果を作品解釈に引き込みつつ、リチャード・ライト、ジェームズ・ボールドウィン、ゾラ・ニール・ハーストンらの作品におけるエンパシーの表象戦略を検討する。研究最終年度にはトニ・モリスンらアフリカ系アメリカ女性作家による作品読解へと進む。感染状況が好転し実地調査ができるようになった時点で、と米調査を実施し、理論的な作品解釈に作者の自伝的要素や同時代の社会的言説を関わらせ、より歴史社会的な文脈から文学のエンパシーの機能を検討する作業に切り替える。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が出た最大の理由は、計画では、渡米してアメリカの大学図書館や研究所での実地資料調査をする予定であったのが、新型コロナウイルス感染症の影響で実施できなくなり、旅費が発生しなかったため。次年度以降に同感染症の影響がなくなり次第、実地調査を実行に移すことにする。
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