研究課題/領域番号 |
20K12962
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
宮澤 文雄 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 講師 (00749830)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | シカゴ万博博覧会 / アメリカ文学 / 世紀転換期 / 万博体験 / 文学的受容 / セオドア・ドライサー / ライマン・フランク・ボーム / ラフカディオ・ハーン |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルスの蔓延により米国での現地調査が困難であったため、昨年度に引き続き国内調査を重点的におこなった結果、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)と博覧会の関係について大きな成果があった。小泉家関連の貴重資料を所蔵する池田記念美術館(新潟県南魚沼市)では、シカゴ万博の時期にあたる松江時代から熊本時代にかけての資料を丁寧に調査することができた。またハーンと博覧会の関係は、シカゴ万博への限定的かつ間接的な貢献だけでなく、アメリカ時代にはニューオーリンズ万博を取材訪問し、日本時代には複数の博覧会へ出向き、その体験をもとにした作品や記事を書いていることが判明した。ハーンの誕生年(1850年)と博覧会時代の幕開けといわれるロンドン万博(1851年)の開催年がほぼ一致していることからも推察できるように、万博の世紀に生きていたハーンへの着目は、文学(者)と博覧会の関係を検討する本研究において広い視座と豊かな文脈を提供することになった。その成果の一部を複数の学会で発表し、論文の執筆をおこなった。具体的には、1884年から翌年にかけてニューオーリンズで開催された万国産業綿花百年記念博覧会がラフカディオ・ハーンに与えた影響について考察した。ハーンの日本行きに関しては、日米の研究者のあいだでこれまで十分に議論されてこなかった点を指摘し、同万博における日本館の展示からの影響がハーンの日本に対する関心や理解を深めたことを論証した。加えて、ハーンの手がけた新聞記事に登場する伊藤圭介、伊沢修二、服部一三という三人の日本人に着目し、彼らの著作や人物に触れた西洋人ハーンのまなざしを分析することで、当時の日本および日本人のイメージが好奇から驚異に転換していることを明らかにした。この研究を通じて、ニューオーリンズ万博とシカゴ万博のつながりも確認でき、広い文脈のなかで万博と文学者の関係を検討することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度と同様に、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、当初から予定していた米国図書館での現地調査を実施できなかったものの、本研究課題を進める過程で得られたラフカディオ・ハーンという新たな考察対象によって、国内調査が想定以上に充実し、これまでの研究の遅れを徐々に回復できている。
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今後の研究の推進方策 |
ハーンと博覧会の関係の検討およびそれに関する国内調査を通じて本研究は大きく進展したため、引き続きハーンに関する研究調査をおこなっていく。こうした成果を踏まえながら、セオドア・ドライサーをはじめとする文学者とシカゴ万博の関係性をあらためて精査してゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度中に実現できなかった米国での現地調査の不足を補うため。この国外調査に関しては今後も状況を見ながら判断してゆくことになるが、この不足を補うために国内調査を充実させるとともに、文献資料の取り寄せ及び購入を積極的かつ柔軟におこない、より良い研究成果へ結実させる。
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