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2021 年度 実施状況報告書

ナラトロジーと空間論の接続による19世紀英国小説のテクスト相関性に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K12964
研究機関東京都立大学

研究代表者

佐久間 千尋  東京都立大学, 人文科学研究科, 助教 (70837236)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードナラトロジー / 空間論 / テクスト相関性 / 19世紀英文学 / ブロンテ姉妹 / おとぎ話
研究実績の概要

本研究は、ブロンテ姉妹とその同時代作家たちを中心とする小説のテクスト内部とテクスト間における語りの構造と空間との相互作用を検証することにより、これらの作家・作品が属するロマン主義小説の汎ヨーロッパ的系譜の再構築を行うことを目的としている。
2021年度は、ブロンテ姉妹の小説とおとぎ話についての研究を進め、研究成果の一部を日本ブロンテ協会第36回大会において発表した。ブロンテ姉妹の作品に関する先行研究の調査において、エミリ・ブロンテの『嵐が丘』については、主に『美女と野獣』や「シンデレラ」との類似性が指摘される傾向が見受けられるが、姉のシャーロットの『ジェイン・エア』に比べるとその文献数は少なく、おとぎ話との相関性という観点においては、未だ研究の余地が多分にあることが判明した。研究発表においては、『嵐が丘』の“witch”に着目し、『嵐が丘』と多くの共通するモチーフを備えるグリム兄弟の「白雪姫」を手がかりとして、語り手ネリーが魔女を体現していることを明らかにした。“witch”という言葉を投げかけられるネリーとキャシーには、空間に対して柔軟な働きかけを行っているという共通点がある。ネリーは空間を管理することで屋敷内での地位を上げる。母親のキャサリンが境界を越えることがかなわなかったのに対し、キャシーは境界を越える能力を備える。空間を越境する魔女の要素を考慮すると、ネリーは魔女を体現し、彼女が養育したキャシーは魔女の要素を継承したものと解釈できる。従来数多の解釈が提示されてきた語り手としてのネリーの人物像を新たな視点からとらえ直すことが可能となった。本研究発表の視点は、ブロンテ姉妹とおとぎ話の関連性について新たな側面を提示するものであり、ブロンテ姉妹の他の作品および同時代作家の作品研究にも応用していくことができるものと考える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

『嵐が丘』とおとぎ話の系譜について、先行研究の調査結果を踏まえたうえで、今後も発展しうる視点を獲得し、所属学会において発表した。本研究発表の内容は、2022年度内に論文として公表する。また、先行研究についての調査を継続し、ブロンテ姉妹の他の作品の精読および考察に取り組み、研究成果を論文にまとめて2022年度内に公表する準備を進めている。

今後の研究の推進方策

本研究の最終年度として、これまでの研究成果をもとに、系譜を構築していく。おとぎ話についての調査を継続し、ブロンテ姉妹の位置づけを行う。おとぎ話における位置づけは、ドイツ・ロマン派との関係性を探る研究においても有用な結果をもたらすと考える。長期休業期間中に渡英し、本研究の補強をはかる予定であるが、昨年度に引き続き、実施困難も想定されることから、先行研究の調査および整理、作品の精読および分析を主眼とした計画も視野に入れている。語りの構造と空間の観点から、作品の諸相を英語による論文としてまとめ、国内外の専門誌に投稿して、国際的に発信することを目指す。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルスの影響を受けて、長期休業期間中に予定していた渡英を見送ったこと、所属学会での研究発表が地方での開催からオンライン開催に変更されたことなどから、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、主に文献調査および先行研究の購入等に使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 空間を掌握する魔女たち-『嵐が丘』と「白雪姫」2021

    • 著者名/発表者名
      佐久間 千尋
    • 学会等名
      日本ブロンテ協会第36回大会

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公開日: 2022-12-28  

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