研究課題/領域番号 |
20K12966
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
生駒 久美 大東文化大学, 文学部, 准教授 (00715063)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 貧乏白人 / 黒人 / 関係性 / 奴隷制 / 南北戦争 / 南部再建 |
研究実績の概要 |
本年度は『英米文学論叢』の第52号に”Sentimental Trouble: Mark Twain’s 'A True Story, Repeated Word for Word as I Heard It”を執筆した。また『マーク・トウェイン:批評と研究』の第20号にKerry Driscoll著のMark Twain among the Indians and Other Indigenous Peoplesの書評を執筆した、
前者では、スーザン・ウォーナーのThe Wide Wide World(1850), ハリエット・ビーチャー・ストウのUncle Tom’S Cabin(1852), マリア・スザンナ・カミングスのThe Lamplighter(1854)といったセンチメンタル・ノヴェルの約束事を確認した後、トウェインが、公の場ではセンチメンタル・ノヴェルやセンチメンタルな文化に批判的であったが、私的な場ではセンチメンタルな詩を書く等、センチメンタリズムに一貫した態度を貫いていなかったことを論証した。その後トウェインの短編”A True Story”(1874)において、元黒人奴隷の女性レイチェルおばさんの声がいかにセンチメンタル・ノヴェルの約束事からずれながら、その主題を表現しているのかを考察した。この論文では、ジャンルの観点からトウェインの黒人奴隷表象を考察した。
後者では、2018年にカリフォルニア大学から出版された、マーク・トウェインの先住民族観を辿った本の書評を書いた。書評を執筆するにあたって、トウェインのネイティブ・アメリカンへの見解にはムラがあったのに対し、黒人に対しては非常に友好的であったことが分かり、本研究を進める上で大いに参考になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス拡大防止のため、渡米を自粛するように言われ、予定していた米国議会図書館での資料収集ができなかった。また海外からの書籍の取り寄せも従来通りにはいかなかった。そのため、Nancy IsenbergのWhite Trash: The 400-Year Untold History of Class in Americaといった貧乏白人に関する手持ちの文献を繰り返し読んだ。またトウェイン作品を再読し、黒人奴隷表象に関する論文を執筆した。その一方で書評を執筆しながら、南北戦争前後の、黒人(奴隷)とネイティブ・アメリカンの置かれた状況を考察し、両者におけるトウェインの態度の違いを検討した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、渡米が可能であれば、米国議会図書館で、南北戦争以前と以後の南部における貧乏白人と黒人の関係性に関する歴史文献等の資料収集を行いたい。そしてそちらの資料を元に南北戦争前の黒人と貧乏白人の関係性を整理し、国内、そして状況が許せば海外で発表を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、渡米し、資料収集する予定であったが、米国のコロナウィルス蔓延により断念せざるを得なかった。またコロナウィルスのため、海外からの書籍、資料の取り寄せが難しくなった。さらに米国のコロナウィルス感染拡大のニュースを受け、申請者も米国からの書籍取り寄せを可能な限り自粛した。海外出張や文献購入を控えざるを得なかった結果、予算使用額に大幅な誤差が生じた。
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