研究課題/領域番号 |
20K12966
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
生駒 久美 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (00715063)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 19世紀アメリカ文学 / 貧乏白人 / 黒人(奴隷) / 境界線 / 階層 |
研究実績の概要 |
2021年度は、2022年3月に発行された『人文学報』に、"Sympathy and Identity Switch in The Prince and the Pauper"を執筆した。この論文は、The Prince and the Pauperにおいて、主人公のエドワード王子と、浮浪児トムのアイデンティティの入れ替わり、それに伴う階層の移動が、二人の間で交わされる共感にどのように関係してるのかを考察したものである。小説の舞台となる,16世紀イギリスの貧民街は、浮浪者問題に取り組んでいた19世紀アメリカを示唆しているという研究がある中、階層(移動)に焦点をあてた小説の分析は、本研究課題である階層への考察を深めることにつながった。
また、2022年4月に発行された『フォークナー』第24号に、Izabela Hopkins著のOff Whiteness: Place, Blood, and Tradition in Post Reconstructions Southern Literatureの書評を執筆し、南部再建期以降の作家たちが、旧南部時代の白人性を再建するというファンタジーに対し、どのように取り組んでいるのかをまとめた。Hopkinsは、南北戦争以降の南部における貧乏白人にも一部言及していて、本研究課題の背景の理解を深める上で役立った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の世界的な流行により、一部予定を変更せざるを得なかったが、南北戦争後の南部の階層について論考を深めた。2021年度は、夏期休暇中に米国議会図書館へ出張し、資料収集をする予定であったが、コロナ禍において、出張を断念せざるを得なかった。また、学期中に所属が変更し、研究環境を整えるために時間を費やした。しかし、依頼を受けた書評、また論文執筆をするにあたって、南北戦争後の南部白人の階級下降の恐怖、白人性再構築のファンタジーへの執着等、問題意識を広げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、8月にニューヨーク州エルマイラにおいて、4年に一度開催される学会(”THE NINTH INTERNATIONAL CONFERENCE ON THE STATE OF MARK TWAIN STUDIES”)で、発表を行う予定である。そこで、貧乏白人と黒人の関係性への考察を深める予定である。また、10月には、日本アメリカ文学会で、Mark Twainの従軍体験記に関して発表する予定である。そちらの発表も、本研究課題に繋げていく予定である。また今年度は、Charles Chesnuttの小説群における貧乏白人と黒人の関係性についての調査も始める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の世界的な流行のため、資料収集および学会発表を延期せざるを得ず、その結果、旅費、および英文校閲費として予算計上していた金額が、未使用となった。また、文献収集も、コロナウィルスの感染に加え、ウクライナとロシアの戦争などの影響もあり、思いのほか、入手困難となり、最初に計上していた予算が消化されなかった。
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