研究課題/領域番号 |
20K12968
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研究機関 | 岐阜聖徳学園大学 |
研究代表者 |
四戸 慶介 岐阜聖徳学園大学, 外国語学部, 講師 (60848216)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 病 / 日常的不調 / 労働 / 階級 / ジェンダー / モダニズム |
研究実績の概要 |
本年度は、ヴァージニア・ウルフの執筆に表れる階級意識に焦点を当てながら、小説 To the Lighthouseの考察、そして『自分ひとりの部屋』、『三ギニー』、女性協同組合(Women’s Co-operative Guild)出版『私たちの知っている生活』へのウルフの序文の関連性の考察を行った。それぞれの考察は、本研究スタート時の基軸であるウルフのエッセイ「病むことについて」に見られる日常的不調の美的、政治的意味との関係性を意識したものである。 To the Lighthouseの考察では、労働者たちの身体の不調に焦点を当て、身体の痛みを抱えながら家の掃除をする登場人物の膝のきしみや呻き声などを、周囲の自然の音との一連のまとまりとして、美的・政治的な表現として捉える試みに取り組んだ。 『自分ひとりの部屋』、『三ギニー』、『私たちの知っている生活』への序文の考察では、ジェンダーや階級という枠組みから生じる他者との距離感の問題に対してウルフが意識的であったことを確認することで、エッセイ「病むことについて」が他者との共感可能/不可能性の境界を探るテクストとして位置付ける試みに取り組んだ。本年度の研究は当初の計画では最終年度に行うものであったが、初年度の研究で扱った作品を考察する過程で浮上した「モダニズム作品における病/不調と労働の関係」の研究を進める中でテーマの関連性が強かったため、本来の計画よりも先に扱うこととなった。それぞれ成果として、To the Lighthouseの考察は大東文化大学大学院英文学専攻主催の特別講義として発表、『自分ひとりの部屋』、『三ギニー』、『私たちの知っている生活』への序文の考察は、一般読者向けに大学で行われている多様な専門科目とその研究成果を紹介した書籍『アカデミック・ダイヴァーシティの創造』(岐阜聖徳学園大学外国語学部編)に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「モダニズム作品における病/不調と労働の関係」についての研究成果を先にまとめる必要があると判断したため、またその研究との整合性を取りながら初年度の研究を推敲し発表するまでに時間を要するため。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、2021年度の研究内容を発展させつつ当初の研究推進方策に立ち戻り、WoolfのBetween the Acts (1941)で描かれる女性登場人物の歯痛の経験を第二次世界大戦前夜の政治的状況との関連から考察を行い、学会での発表、論文投稿をする予定である。また、初年度の研究の論文発表も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、感染症拡大以前の研究への取り組み方や学会実施の方法等が変わり、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、書籍の購入、研究雑誌の購入、学会(対面)への参加等で使用を予定している。
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