研究課題/領域番号 |
20K12968
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研究機関 | 岐阜聖徳学園大学 |
研究代表者 |
四戸 慶介 岐阜聖徳学園大学, 外国語学部, 講師 (60848216)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 英国モダニズム文学 / 病 / 労働 / フェミニズム / 身体 |
研究実績の概要 |
2022年度は、ヴァージニア・ウルフの『幕間』で描かれる女性登場人物の歯痛の経験を第二次世界大戦前夜の政治的状況との関連から考察を行い、学会での発表、論文投稿をする予定であったが、2021年度に取り組んだ研究―ウルフのエッセイ「病むことについて」に見られる日常的不調と①小説『灯台へ』の関係性の考察、そして②エッセイ『自分ひとりの部屋』、『三ギニー』、女性協同組合出版『私たちの知っている生活』への序文との関係性の考察―を結び付けるための研究を行った。これは、『灯台へ』の労働者の苦痛の身体経験と音の関係の考察が、『幕間』の中に表れる音や野外劇の<中断>という象徴的な表現と女性登場人物アイサ・オリヴァーの歯痛の感覚との関係を考えるための前段階として必要な行程だったためである。 その研究内容は、労働者階級に対するウルフの複雑な眼差しを考慮しながら『灯台へ』における不調を抱えながら働く労働者の身体音/労働の音/自然の音の美的・政治的表現を、Murray Schaferによって広められた音・風景・文学の関係を扱う“literary soundscape”という研究分野(これは2020年にケンブリッジ大学から出版されたSound and Literatureでは “Literary Soundscapes”というタイトルのHelen Grothの論文で取り上げられている)を参考に考察していくものであった。この研究は、第5回韓日国際ヴァージニア・ウルフ学会(The 5th Korea-Japan International Virginia Woolf Conference)にて発表を行った。 この発表を経て、ウルフ作品における不調とジェンダー化/階級化された身体性の関係を明確にしていくこと、そしてウルフ作品と音(の中断や反復)の関係を扱う研究を再び見直す、という課題が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来の研究計画で予定されていた研究を進める中で、改めて整理しておく必要のある研究項目が課題として生じたために研究はやや遅れている。具体的には、ヴァージニア・ウルフの小説『幕間』の中に表れる音や野外劇の<中断>という象徴的な表現と女性登場人物アイサ・オリヴァーの歯痛の感覚との関係を考察する前段階として、それまでに取り組んでいた『灯台へ』の考察や労働者階級に対するウルフの複雑な眼差しの考察を整理し、労働者の苦痛の身体経験と音の<中断/反復>との関係の考察を行う行程が必要となったためである。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、ウルフ作品における不調とジェンダー化/階級化された身体性の関係を明確にしながら、小説『幕間』で描かれる女性登場人物の歯痛の身体経験を第二次世界大戦前夜の政治的状況との関連から、特に作中の音、野外劇、台詞などの<中断/反復>という表現に注目しながら考察を行い、学会での発表、論文投稿をする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症拡大の影響により、海外での研究調査や学会への対面参加の機会が減少し、計画と異なる研究活動を余儀なくされたため。 次年度使用額は研究書や雑誌の購入や、オンラインでの学会参加に必要となる備品の購入等に充てる予定である。
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