研究課題
若手研究
本研究は、英国モダニズム文学における病と日常的不調の美学と政治学の関係を考察した。特に、自身のエッセイで文学作品における〈日常的不調〉の重要性を説いたヴァージニア・ウルフの作品を軸に、間テクスト的読解で彼女と同時代の作家たちによる仕事との関係も考慮しながら、病と不調がなぜ書き込まれ、どのように機能しているのかを明らかにした。ウルフのテクストに関して、英国モダニズム文学の中に見られる病と日常的不調の描写を支える、フェミニスト的美学と政治学があることを提案した。
英文学および英語圏文学関連
文学作品に現れる病に焦点を当てた基本的な先行研究では、これまで大病や精神的病の社会的・文化的解釈を考慮するものであったが、本研究では、そうした病と比べ見過ごされがちな「取るに足らない」日常的不調に着目した。ヴァージニア・ウルフがこれからの文学における日常の不調の重要性を強調していた事実を踏まえ、同時代の社会や文化的背景を共有していた作家たちが作品に描く日常の不調の美学的そして政治的重要性を改めて考え直す手がかりとなるものである。