研究課題/領域番号 |
20K12970
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
瀧川 宏樹 大阪工業大学, 工学部, 講師 (70823665)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ブランウェル・ブロンテ / 英雄 / 悪漢 / glory / あるイギリス人の手紙 / 語りの視点の変化 |
研究実績の概要 |
令和2年(2020年)度は、ノイフェルト版『ブランウェル・ブロンテ作品集第1巻1827-1833年』における、ブランウェル・ブロンテが描く男性像の変遷を追った。ブランウェルが10代前半で、まだ社会に出る前の彼が描く作品を対象としたが、発見は大きく分けて以下の3点である。 ①ほとんどの登場人物が男性である点・・・これまでのブロンテ研究ではフェミニズム研究が盛んで女性色の強い文学という印象が強い。しかし、ブランウェルの最初期の作品では女性はほとんど登場せず、男性色が濃い。これはこれまでのブロンテ研究ではほとんど言及されてこなかった点である。 ②単純な男性像・・・10代前半という経験値のなさ故ではあるが、後の作品における複雑な人物描写はまだ見られない。この時期の作品は、単純な英雄像と単純な悪漢像の対比が著しく、前者はgloryという単語で描かれ続け男性の理想像とされ、常に最後は勝者となる。一方で後者は最後は敗北の末路を辿る。しかし、理想像となる英雄たちは、英雄であるために常に命をかけて戦い勝利を収めなければならず、その課された責任や重圧は重いものである。 ③転換点となる「あるイギリス人の手紙」・・・この作品以前は、ブランウェルの作品の語りは、英雄側に属する語り手が、英雄側から物語を語るというものであった。しかしこの作品の第3巻以降、英雄側に属する語り手が、悪漢側から物語を語るという視点の変化が見られる。物語の結末において英雄側が勝利を収めるという構造はこれまでと変化はないが、悪漢の人生に目を向けることで、単純な英雄像対単純な悪漢像からの脱却が見いだせる。敗者には敗者の人生があり、それもまた男性の生き様の一つであることをブランウェルは描いている。この作品はこれまで研究対象として取り上げられることはほとんどなかったが、大きな転換点となる重要な作品であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、オンライン授業への対応等で公務に必要な時間が予想外に多かったため、1833年までの作品を分析する予定であったが、1832年までの分析までしか辿り着けなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年(2021年)度は、1833年以降の作品分析を引き続き進めていく予定である。1832年までの作品にはほとんど女性は登場しなかったが、1833年以降は徐々に女性の登場人物が登場し始める。それに伴い男性像も複雑化していくが、その様を明らかにする。 また、令和2年度に、ブランウェル研究の批評史に関する論文を発表したが、その中でエリザベス・ギャスケル(Elizabeth Gaskell, 1810-65)の影響の大きさを再認識し、ギャスケルの『シャーロット・ブロンテの生涯』(1857)における男性表象に関しても研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大による渡航制限により、国際学会、国内学会ともに現地に赴くことができず、旅費の使用が一切なかった。その代わりにオンラインでの開催が主流となってきたので、そのための設備や機器の充実化に次年度以降使用していく。
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