研究課題/領域番号 |
20K12971
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
松本 ユキ 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (00734625)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 食 / 物語 / 人種 / ジェンダー / 労働 / 感情 / 環境 / 災害 |
研究実績の概要 |
2020年度はこれまでの研究成果をもとに、それを更に発展させる形で、共同研究、学会発表、論文投稿に取り組んだ。 年度の前半には、国際学会の学会誌に採用された英語論文の修正を行いながら、同時並行で他の論文や学会発表の準備をした。論文のスタイルや分野が文学とは異なるため、修正に思った以上に時間を費やしたが、査読者や編集者の助力のおかげで、研究成果を広く発信することができた。また11月には、文学・環境学会全国大会(オンライン開催)にて、アジア系アメリカ文学と災害に関する報告を行った。年度末には、文学関連の研究論文を一本書き上げた。 コロナ禍の影響により、予定していた海外での調査や研究成果の発信はできなかったが、国内で資料を収集し、インターネットやメール等で海外の最新の動向を調査した。学会や研究会その他のイベントについては、オンラインで参加することとなった。 本年度は、以前から扱ってきたアジア系アメリカ文学や映画を、「トランスボーダー」「環境」「災害」「食」「ジェンダー」「労働」などの観点から再読し、新たな知見を得ることができた。現在、「移民と食」「災害と文学」に関連するプロジェクトを共同で行っており、研究発表の成果を次年度以降に論文にまとめていく予定である。 本研究のテーマである、「食」とアジア系アメリカ文学の関わりは、コロナ禍において、更に関心を集めるテーマとなっており、現在の状況と照らし合わせながら、今後更なる研究を進めていく必要があるだろう。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス感染拡大の影響により、当初予定していた海外での調査や研究成果の発信等はできなかったが、国内での研究発表や論文投稿についてはおおむね計画通りに遂行することができた。 しかしながら、いくつか当初の計画に変更も生じた。可能であれば国外での調査、学会発表を実施しようと計画していたが、これについては断念せざるを得なかった。その代わり、国内で新たな研究の場を得ることができた。2020年度より環境と文学に関する研究を共同で行い、その成果をワークショップで発表することができた。国際学会の発表については残念ながら一年延期となってしまったが、国内での研究はおおむね計画に沿って進めることができた。また所属学会においても、共著の出版計画のために、新たな論考を書く機会を得ることができた。 これらの研究プロジェクトは、「食と文学」というテーマを直接取り扱ったものではないが、本研究と関連のあるテーマであるため、結果的に本研究においても重要な知見を得ることができた。また以前投稿した英語論文の校正に思っていたよりも時間がかかってしまったため、新たな資料の調査や考察にやや遅れが生じてしまった。 未曾有の事態により、年度初めには研究計画が滞り、多少の変更を余儀なくされたが、年度の後半にはおおむねそれを取り返すことができたと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度の前半には、「食と文学」「災害と文学」に関連する共同プロジェクトの成果を論文にまとめていく予定である。学会での発表原稿を加筆修正したものを論文にまとめ、出版する計画を進めていく。いずれの原稿も、現在のコロナ禍の状況を受けて、新たな資料収集や追加調査が必要な状況となっている。具体的には以前現地調査を行った機関にメールで現状の問い合わせをしたり、インターネットで最新の情報を確認する作業を行っている。現在の状況を反映したうえで、これまでの研究成果に手を加えていきたい。 秋ごろには昨年度実施予定であったが1年延期となった国際学会の発表がオンラインで開催される。発表で扱うのは、日系作家ルース・オゼキの小説『あるときの物語』である。特に作品における「食」「環境」「ジェンダー」「災害」についての表象に着目する予定である。次年度以降、発表原稿を英語論文にまとめることを目指している。 年度の後半には、新たに様々な先行研究や文学作品を読み進めていきたい。資料収集については今年度に少しずつ進めていたものの、まだまだ十分に分析できていないため、今年度中に更なる考察を進め、次年度以降に研究成果を発表していきたい。分析対象とする作品は現代アジア系アメリカ文学のなかでも「食」にかかわる労働や感情について扱ったものである。以前からアジア系アメリカ文学で扱われてきたテーマではあるが、現代の作家たちがどのようにその問題に取り組んでいるのかしっかりと考察していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度も引き続き、研究環境整備にかかわる物品の購入、研究関連の書籍等の資料の購入、英文校正のための人件費などに使用する予定であるが、海外での研究調査や成果発表にかかる渡航費などの費用の使用については未定である。
|