研究課題/領域番号 |
20K12977
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研究機関 | 沼津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
高瀬 祐子 沼津工業高等専門学校, 教養科, 助教 (30708433)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 不動産小説 / 不動産表象 / 場所性 / 家 / 家庭 / アメリカ |
研究実績の概要 |
令和2年度はコロナウイルスのパンデミックにより、学会発表などは予定通りに進めることができず、研究室や自宅でできる文献の分析や資料収集を中心に取り組んだ。まず「不動産小説」として再読できると考えた作品群について、調査・検討を行った。次に、場所や固有の土地をテーマにした文学批評論文を集め、調査を実施した。また、イギリスのアラン・チューリング研究所においては、文学作品の舞台となった場所を実際の場所に当てはめ、新たな文学解釈の方法(Chronotopic cartographies for literature)を試みており、このような分析方法についても検討した。 以上のような分析・調査を踏まえ、本研究のテーマである不動産表象を検討する上で、文学作品における場所の重要性をあらためて確認することができた。特にエドゥアール・グリッサン著『フォークナー、ミシシッピ』に見られるような作家と場所を接続する作業を経ることにより、作品における土地や家という不動産の輪郭はよりはっきりと浮かび上がり、背景となるアメリカ性を理解できると考える。また、作家が作品において、どのような土地を舞台にしているのか? という先述したカルトグラフィー的な作品分析を進めている。例えば、エドガー・アラン・ポーは訪れたことのない土地を舞台に多くの作品を書いている一方で、実際に住んだ土地を舞台にした作品は少ない。作家別にカルトグラフィーを作成することで、作家と場所の分析がより充実すると考えている。 令和2年度は「家」という空間についてあまり分析を進めることができなかったが、パンデミックにより「家」や「家庭」の持つ役割や意味合いも変化しつつあるように思える。また、国際学会での学会発表等ができなかったため、研究費は来年度以降の使用にまわした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度はコロナウイルスのパンデミックにより、学会発表などは予定通りに進めることができず、研究室や自宅でできる文献の分析や資料収集を中心に取り組んだ。元々令和2年度は文献の整理等を実施することを予定していたため、大幅な研究計画の遅れはないが、リモート授業への急な変更への対応等に時間を取られたため、研究時間を確保するのが難しかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度はアメリカでの調査を予定しているが、感染状況や日本におけるワクチン接種の遅れを考えると実現は難しい。今年度アメリカでの調査ができない場合は来年度以降に実施する予定である。そのため、令和3年度にアメリカで実施予定だった調査は延期し、国内でできる調査や論文執筆に切り替える。 学会発表は、多くの国際学会でリモートと対面の両方で実施することが計画されているため、リモートで学会発表を行う予定である。また国内での学会発表に切り替えて計画することも考えている。令和2年度に実施した文献の分析や調査を踏まえて、論文執筆に力を入れる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は学会・研究会等がほぼすべてリモート開催となったため、旅費を使用する機会がなかった。本などもすでに所有しているものから、調査・分析を開始した。
令和3年度も引き続き学会等のリモート開催が続くと思われるが、令和2年度の研究成果を踏まえて、今後必要な本や資料が明確になったため、本や資料の購入、パソコン、プリンター等を購入する物品費として使用する予定である。
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