本課題における中心的な研究成果としては、古代末期の聖書叙事詩についてその作品構造、古典作品からの影響といった側面からの作品分析を行うことができた点である。ユウェンクス『福音書四巻』、セドゥリウス『復活祭の歌』、アラトル『使徒の物語』という新約聖書による聖書叙事詩について検討を行った。ラテン語叙事詩の重要な模範としてウェルギリウスが参照されるのは当然ながら、これらの聖書叙事詩にはそれ以外の詩人の影響(とりわけオウィディウス)が見られる他、いわゆる古典的な叙事詩とは異なる特徴を挙げることができた。成果の一部は一般書の一部として公刊され、聖書叙事詩に関する一般的な認知を高めることもできた。
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