研究課題/領域番号 |
20K12986
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
志々見 剛 学習院大学, 文学部, 准教授 (40738069)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ボダン / 歴史論 |
研究実績の概要 |
2023年度は、幸いなことに大学でサバティカルをとることができたので、これまでの期間にためこんでいた資料や文献などの整理、読解、分析をある程度おこなうことができた。とりわけ、ジャン・ボダンの歴史論(『歴史を容易に理解するための方法』他にみられる)の背景や源泉を検討するうえで、時代を少しさかのぼって、16世紀の前半のフランスにおける歴史と虚構との交錯を検討した。具体的には、ジャン・ルメール・ド・ベルジュの『ゴールの栄光とトロイの驚異』や、ラブレーの物語作品(特に『パンタグリュエル』、他に『第四の書』など)を主な対象として研究をすすめた。これらと密に関係するものとして、ヴィテルボのアンニウスの捏造した古代の著作形のテクスト群、トロイの真の歴史とされるフリギアのダレスやクレタのディクトュスの著作(偽書)、中世から同時代にいたる諸々の年代記や物語類などが、真偽の境目のあいまいなまま交雑している点を検討した。それぞれが広がりのあるテーマであり、様々な分野での先行研究もあるので、それらに目を配るだけでもかなりの時間を要するものである。 現在のところ、このような検討の結果を、ルメール・ド・ベルジュに関するものと、ラブレーに関するものとの2本の論文としてまとめているところである。いずれも、まだ検討しなければならない細かい点が残ってはいるものの、ほぼ完成に近づいている。何らかの機会をとらえて、今年度中には発表したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
この研究を始めた当初はコロナの影響で、海外での資料収集ができず、また、大学の授業や学務も混乱をきたして、なかなか研究に打ち込む余裕を持てなかった。本年度は比較的余裕があって、ある程度は挽回できたように思うが、それでもそもそもの計画からしてやや遅れてしまっていることは否めない。
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今後の研究の推進方策 |
まずするべきことは、現在執筆中の論文2本を完成させ、何らかの形で発表することである。それに加えて、パリの国立図書館等で、追加的な資料調査を行えればと考えている。 内容面では、ボダンが広くその圏内にいるような、同時代の歴史論、虚構論の読解、分析を進めていきたいと思う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、大学がサバティカルであり、重複する物品や資料の購入などは、そちらでまかなうことができた。また、フランスへの渡航も、そちらを用いて行っている。次年度は、残額を生かして、海外での資料調査などに有効に活用したいと考えている。
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