研究課題/領域番号 |
20K12991
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
学谷 亮 中京大学, 教養教育研究院, 講師 (00801979)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ポール・クローデル / フランス文学 / フランス詩 / 日仏交流 |
研究実績の概要 |
本研究は、20世紀フランスの詩人・劇作家・外交官であるポール・クローデルが駐日フランス大使として日本に滞在中に発表した詩論『フランス語詩句に関する考察と提言』(1925)において、その作詩理論がクローデルの日本滞在中の経験といかなる関係を取り結んでいるのかを明らかにするものである。今年度は、クローデルの文学観・文明観における日本文化の影響と、日本におけるクローデルの受容について研究を行った。 昨年度は、クローデルが日本で執筆した日本文化論のうち最も重要な「日本人の魂へのまなざし」(1923)について、「外交」と「批評」の関係性という観点から読解し日本フランス語フランス文学会で発表したが、今年度はその内容をさらに深化させた論文を刊行した。「日本人の魂へのまなざし」の原型となった講演「日本の伝統とフランスの伝統」を大正期の「伝統主義論争」との関係から読み解くことで、この講演の問題意識を明らかにし、またそれがどのような改変を経て「日本人の魂へのまなざし」へと書き換えられたのかを検証した。また、「日本人の魂へのまなざし」と対をなす「ミカドの葬儀」(1927)について、クローデルの神道理解に着目して読解し、論文化した。以上の二論文により、1920年代にクローデルが構築した作詩理論の重要な背景となる日本文化に対する理解を、実証的に明らかにすることができた。 これに加えて、今年度は、クローデルの作詩理論を研究するにあたって日本の詩壇・文壇との交流の実態をより具体的に解明する必要があると考え、大正期の文芸雑誌や新聞等を集中的に調査した。その結果、これまでのクローデル研究で全く言及されていない詩誌『詩洋』のクローデル特集号を発見し、同誌の主要同人であった前田鐵之助とイナ・メタクサのクローデル受容について研究し論文を執筆した。同論文は査読に合格し、2022年度に刊行予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に続き、新型コロナウイルスの影響でフランスでの文献調査を行うことができなかった。そのため、当初の研究計画のうちフランスでの調査を必要とする箇所については最終年度に見送らざるを得ない結果となった。しかし、その分日本国内の図書館等での文献調査により時間を割き、新発見の資料を含む数多くの成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究課題の最終年度であり、最も重要な問題である『フランス語詩句に関する考察と提言』の読解作業に注力することになる。しかし、10月ごろまでにフランスでの文献調査が可能となるか否かによって研究の方向性が大きく変わると予想される。『考察と提言』を、当時クローデルが日本で担っていたフランス語の普及啓蒙活動及びフランス詩史に関する考察と関連づけながら論じることは本研究課題独自の視点であるが、そのためにはフランスでの一次資料収集が不可欠である。次年度も渡仏が認められない場合は、日本国内での調査結果をもとに、作詩理論を構成する諸概念が日本文化から受けた影響を中心として『考察と提言』を読み解くことも考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大により、海外での資料調査および国内外での学会・研究会等参加の機会が失われたため、旅費として使用を予定していた予算を書籍の購入に充当した。それに伴い若干の次年度使用額が生じたが、これは次年度の旅費に充てる予定である。
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