研究課題/領域番号 |
20K12995
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
高橋 知之 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 助教 (40826640)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 19世紀ロシア文学 / 日露比較文学 / ドストエフスキー |
研究実績の概要 |
本年度は19世紀ロシア文学の研究に主に取り組んだ。第一に、昨年度に引き続き、ドストエフスキーの長篇小説『ステパンチコヴォ村とその住人たち』の研究に取り組み、その成果を翻訳というかたちで発表した(ドストエフスキー(高橋知之訳)『ステパンチコヴォ村とその住人たち』光文社古典新訳文庫、2022年9月)。拙訳は43年ぶりの新訳、かつ初の文庫化でもあり、アウトリーチとして意義があると考えている。翻訳には詳細な「解説」を付したが、これは前年度の業績である論文「小さな暴君の来歴――『ステパンチコヴォ村とその住人たち』の主人公について」(『現代思想』49巻14号、2021年11月、285-294頁)等に基づき、さらに考察を発展させたものである。第二に、研究を進めていく過程で、新たに「幻想」というテーマが浮上してきた。ロシア近代文学において、「反省」の主題が顕在化するのは、いわゆる「リアリズム」の勃興と軌を一にしている。それは社会から切り離された「余計者」の自意識の問題として捉えられ、やがて社会変革という実践の現場が希求されるようになる。一方で、文学的な想像力の現場においては、「反省」を打破する契機として「偶然」が希求され、それは「幻想」の領域とも決して無縁ではない。従来、ロシア近代文学において「幻想文学」は「リアリズム」に対する隠れた傍流とみなされてきたが、実は両者は同じ主題圏の中で捉え直すことが可能なのではないか。このような問題意識のもとに、さまざまな作品を渉猟し、調査した。論文等にまとめて発表するまでには至っていないが、次年度に期したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献の渉猟・調査という面では相応に進展しているが、アウトプットの面であまり成果をあげられていないため、「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究課題の最終年度でもあり、これまでの資料調査、テクスト分析の成果を論文にまとめ、所属する研究機関や学会における紀要・学術誌に発表する。同時に、アウトリーチ活動の一環として、文学作品の翻訳も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は研究期間を2022年3月までとしていたが、本研究課題の開始以降、支出実績のない中断期間もあったため、研究計画に遅れが生じている。そのために次年度使用額が生じた。すでに研究期間の延長が承認されており、この次年度使用額は、2023年度の研究費として使用させていただく。
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