研究課題/領域番号 |
20K13006
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
城 綾実 立命館大学, 文学部, 准教授 (00709313)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 会話分析 / 科学教育 / マルチモダリティ / 隣接ペア / 情報授受 / 空間 |
研究実績の概要 |
先行発話のジェスチャーが後続発話でジェスチャーをすることを制約することはあるのか。従来のジェスチャー研究と社会学や言語学における相互行為研究で明らかにされてきた隣接ペアの制約関係についての知見をもとに、本研究課題では、日常会話、科学コミュニケーション場面、介護場面、観光場面などの多様な状況や場面の相互行為データをもとに会話分析を用いて、「先行発話が後続発話においてジェスチャーを用いることを方向づけるような参加枠組み」の存在を明らかにし、ジェスチャーをはじめとするさまざまな身体的ふるまいを活用する参加枠組みの創出メカニズムに迫ることを目的とする。 2022(令和4)年度の成果は次の通りである。 昨年に引き続き、神奈川県にある「はまぎん こども宇宙科学館 (正式名称:横浜こども科学館)」での調査が認められ、職員と来館者(親子連れ)の協力のもと、「会話域」、「近接域」、「相互認識域」の3パターンの空間内で展示解説を収録した。また、昨年収録したデータを分析するにあたり、子ども向け科学館のコロナ禍における相互行為の背景情報を整理・分析した成果が日本教育工学会論文誌に掲載された。 2023(令和5)年に開催される国際会話分析学会(the International Conference on Conversation Analysis; ICCA2013)にジェスチャーを用いることを方向づけるような連鎖的環境が生じる可能性について論じる予定の“Some gestures to initiate sequential environments for gesturing: Focusing on information-seeking sequences and formulating”という口頭発表が採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022(令和4)年度に分析補助の作業者を雇う予定だったが、適任者が見つからず作業が思ったより進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
作業者については、2022(令和4年)度末に1名、2023(令和5)年度4月に1名、計2名の作業者が見つかったため、令和5年度は遅れている分を少し取り戻すことができそうである。 令和5年度7月2日に発表する内容は、これまで集めた日常会話、科学コミュニケーション場面、介護場面、観光場面などにおいて、参与者間で知識差が生じている際の情報要求、とくに描写要求にかかわる隣接ペアを対象に、近年会話分析にとって重要な研究トピックである認識性(epistemics)の議論も踏まえたものなので、さらなる分析と発表準備を進める。 令和5年度後半は、学会でのフィードバックをもとに、再分析と論文執筆を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020(令和2)年度の影響がまだ続いているが、2022(令和4)年度としては適切に執行できていた。ただ、国際学会の開催が研究計画調書提出時の予定から2年延期されたことに加えて、「現在までの達成度」で述べた作業者の確保ができなかったことが、初年度の影響を今年度中に克服できなかった大きな理由である。「今後の研究の推進方策」で述べたように、2023(令和5)年度は作業者を2名確保し、雇用を開始しており、国際学会も開催されるため、順調に執行できる見込みである。
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