研究課題/領域番号 |
20K13011
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
早野 薫 日本女子大学, 文学部, 准教授 (20647143)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 会話分析 / 発話デザイン / 情報のなわ張り / 認識性 / 優先的権利 |
研究実績の概要 |
2020年度は、新型コロナウィルス感染症拡大のため、予定していた会話データの収集は一切できなかった。そのため、すでに収集されていたデータの分析と、先行研究の整理に専念した。その結果、以下の知見が得られた。 保育士と保護者の、保育園下園時における会話の構造と特徴を分析したところ、保育士からの報告によって開始されるやりとりは、一般的な日常会話における報告とは異なる形で展開していくこと、保育士の報告の内容(深刻なものなのかそうではないのか、喜ばしいものなのかそうではないのか)は、保育士の報告の冒頭で予示され、その後のやりとりの構造を形づくることが観察された。これらの現象には、保育士と保護者のそれぞれが子どもに対して持つ権利と義務、それに対する参与者たちの志向性が具現していると言うことができる。知見の一部は、論文集の1章、研究発表などで報告した。 同じく新型コロナウィルス感染拡大のため研究交流をすることがままならなかったが、2021年6月にオンラインで開催される第17回国際語用論学会にて、“Talking to and about children: Studies of child-centered interaction across contexts”というタイトルでパネルを編成した。このパネルでは子どもとの、あるいは子どもについての、相互行為における大人のふるまいを研究対象とした国内外の会話分析研究研究を12件採択した。このパネルを通じて、発話デザイン、対象について語る優先的権利、という観点を軸とした研究交流を広げている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述の通り、2020年度は予定していた相互行為データの収集を実施することができなかった。大学の遠隔授業準備など、コロナウィルス感染への対応に追われたが、文献整理、既存データの分析は着実に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの感染状況を見ながら、安全に実施可能であると判断された場合には、保育園、美容院におけるフィールドワークを実施し、データ収集を行なう。当初検討していた動物病院でのフィールドワークは、時間的制約という点、感染症対策という点から、実施は難しいと考えている。また、対面でのデータ収録が適わない可能性に鑑み、既存のデータの分析を進めるとともに、電話会話やzoomによるオンライン会話の収録も行なう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大に伴い、予定していた学会出席のための旅費が発生しなかった。また、データ収集が実施できなかったため、データ転写のために計上していた委託費の支出がなかった。 2022年度も国内外の学会参加のための旅費は発生しない見込みである。その分、データ転写のための委託費、英文校閲委託費、およびビデオデータの分析、編集に必要なコンピューター及びソフトウェアの購入に充てる予定である。
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