研究課題/領域番号 |
20K13011
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
早野 薫 日本女子大学, 文学部, 准教授 (20647143)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 会話分析 / 認識性 / 報告連鎖 / 発話の組み立て |
研究実績の概要 |
2021年度はデータ分析を進め、国際学会発表および学術誌の特別号の企画申請という形でその成果をまとめることができた。前者については、国際語用論学会(2021年7月、オンライン開催)にて本研究課題に関わるパネル(“Talking to and about children: Studies of child-centered interaction across contexts”)を主催し、英語、イタリア語、中国語、フィンランド語、日本語など、さまざまな言語文化で収集された子どもをめぐるインタラクションをデータとして扱う研究をまとめて発表し、研究交流をする機会を設けた。そのなかで、早野は保育園における保護者と保育士との会話において子どもに向けられる発話の組み立てとそれが果たす相互行為上の役割について分析結果を報告した。パネルの発表全体をとおして、大人が子どもについて、あるいは子どもに対して発話を産出する際に現れる社会的規範(それぞれの立場に付随する権利、義務、期待など)としてどのようなものがあるか、それが相互行為にどのように出来するかが示された。 このパネルの成果の一部を学術雑誌としてまとめることをニューハンプシャー大学のDanielle Pillet-Shore氏と共同で企画し、学術誌Research on Children and Social Interactionに特別号の申請を提出し、受諾された。本特集号は2023年春に刊行される予定である。 引き続き新型コロナウィルス流行の影響で新たなデータを収集することが難しい時期が続いたが、3月には保育園でのデータ収録を実施することができた。量的には計画していたものには達しなかったが、子どもを交えた保育士、保護者の3者間会話を高画質、高音質で収録することができ、貴重なデータを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス感染症流行の影響により、新規に収集したデータは、量という点においては、計画通りに実施することはできなかった。しかしながら、データの質的には大変貴重なデータを収録することができた。また、既存データの分析により着実に研究成果を挙げることができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、フィンランドのヘルシンキ大学にて研修を行なう。なお、本研究課題申請時には、2021年度に研修を取る予定だったが、新型コロナウィルス感染症流行のために1年間延期された。 ヘルシンキ大学には会話分析研究を牽引し国際的に活躍するMarja-Leena Sorjonen教授を中心とし、発話の組み立て、認識性、子どもをめぐるインタラクションなど、本研究課題に関連するトピックに取り組み成果をあげている研究者が多く在籍している。ヘルシンキ大学での研修期間中に広く、定期的に研究交流をし、専門家のフィードバックを得ながら2021年度に新たに収集したデータの転記と、これまでに得られたすべてのデータの分析を進め、また、論文執筆を進めることを目指す。年度前半は前述のResearch on Children and Social Interaction特集号の執筆者、編者としての作業に注力する。年度後半は、本課題のテーマである、会話における発話のデザインと優先的権利という観点から知見をまとめ、日本国内外の学会で発表してフィードバックを得ることにより、2023年度に学術雑誌で論文として研究成果を発表をするための準備を進める。 2023年度には、論文という形で研究成果を発表すると同時に、データ収録に協力していただいたフィールド(保育園)にて研究成果の報告を行ない、知見を現場に還元することも試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の申請時には、2021年度にスウェーデンにて研修を予定しており、研修先から日本国内外の学会に渡航すための旅費として予算を計上していた。しかしながら、新型コロナウィルス感染症流行のために研修が延期されたこと、学会がオンライン開催となったことにより旅費が発生しなかった。 繰り越した予算は2022年度の学会出張費および英文校閲の業務委託費用として使用する予定である。
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