研究実績の概要 |
研究代表者は、客員研究員としてヘルシンキ大学で2022年度を過ごした。ヘルシンキ大学に所属する会話分析の専門家との研究交流や研究発表を通して、おおむね順調に研究課題を進捗させることができた。分析に際しては、以下の4点に着目した。1) 子どもについてそれぞれに語る権利を持つ保護者と保育士が大人同士で会話をする中で大人が子どもに発話をむける時、そこにはどのような構造やパターンがあるか。2) 保護者と保育士が子どもに発話を向けることは、相互行為上どのような実践として働くか。3) 保育士が、親とのやりとりにおいて日中の子どもの発話を引用する時、そこにはどのような構造やパターンがあるか。4) 保育士が子どもの発話を引用することは、相互行為上どのような実践として働くか。 1), 2)の観点からの分析の結果、保育士は、保護者との会話の中で発話を子どもにも向けることで子どもを経験について語る主体になり得るものとして扱うこと、そうすることでこれから保護者に語ろうとする出来事の性質を保護者に予示することが明らかになった。3), 4)の観点からの分析の結果、保育士が行為の主体としての子どもの権利に対する配慮を表明しながら、自分が保育者としての責務を果たしていることを主張していることが示された。 2022年度前半は、2021年度までに収集したデータの整理、文字化を完了させ、1), 2)の観点から分析を進めた。2022年度中盤は、1), 2)の分析結果を論文にまとめ、国際学術雑誌に投稿した。この論文は採択され、2023年度中に掲載されることが決まっている。2022年度後半は、当該投稿論文の改訂を進めるとともに、3), 4)の観点からデータ分析を進めた。
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