研究実績の概要 |
2023年度は、主に共時的多言語調査に力を入れ、中国語、韓国語、日本語、モンゴル語、タイ語、ベトナム語、ロシア語、英語、スペイン語、ドイツ語を対象に、各言語における受身標識及び語彙的受身動詞について言語調査を行った。これらの言語において、どのような意味を持つ語彙が選択され受身標識に文法化するかを調査し、多様性を生み出す意味変化の共通性を明らかにした。 本研究で確認された方向性とこれまでの先行研究で指摘されてきた方向性をつき合わせて検討し、EAT, SEE, GET, REFLEXIVEなど受身標識の起点領域に潜在する共通の特徴を見出した。方向性の間の関連性について、本研究ではこれまで指摘されてきたEAT, SEE, GETさらにREFLEXIVEの上に新たに<動作主向けの移動(AGENT-DIRECTED MOTION)>という上位カテゴリーを立て、方向性の間における縦の構造を構築する。これまで個別の言語で個別に扱われてきた現象に対し、統一的説明を与え、従来看過されてきた言語事実を新たに発掘し、受身標識の文法化について新たな知見を得た。
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