研究課題/領域番号 |
20K13018
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研究機関 | 九州共立大学 |
研究代表者 |
黒木 隆善 九州共立大学, 経済学部, 准教授 (10751654)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 島の効果 / ラベリング分析 / wh移動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、(主語の)島効果において、「島の内部から移動が許される・許されない」という特徴が、ラベリング分析で具体的にどのように捉えられるかを考えることにある。そこで2020年度は、ラベリング分析を取り入れている文献及び研究を収集し、情報を整理する取り組みを行った。 また、島の効果に関する文献収集及び研究情報収集の過程で、Rizzi (2015)のカートグラフィとラベリング分析を用いた分析と、Chomsky (2013, 2015)におけるラベル付与操作のタイミングを援用することで、分裂文の焦点化位置の要素がwh移動できる事例を説明できる可能性を研究し、日本英文学会九州支部第73回大会において、「分裂文の焦点要素が焦点位置に移動する時点では、ラベルを付与する操作が適用されていないため、wh移動が可能である」という主張を行った。この研究では、句の移動は最大投射の要素に適用されるという仮説に基づき、分裂文の焦点要素が焦点位置まで移動した時点では、ラベル付与の操作が適用されない状況となっていることから、wh句が最大投射のままと判断され、wh移動が可能であると結論づけた。また、この研究は同支部のProceedingsに掲載された。 なお、この研究は、本研究の目的である島の効果の分析と直接的な関連性は低いが、少なくとも、「ラベル付与の操作が適用されない限りにおいては、wh句が最大投射として移動可能である」という結論は、主語の島の内部から移動が「許される」事例に援用できる可能性がある。そのため、この研究で得られた成果及び今年度収集した島の効果に関する文献等を照らし合わせ、2021年度は島の効果の研究を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度末から2020年度いっぱいにかけて新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大が生じ、2021年度においてもなおその影響が続いている。本来であれば、2020年度に島の効果の研究に本格的に着手する予定であったが、本学全体において留学生対応の役割を担う役職の関係上、留学生の入国や遠隔授業の体制を整える業務が非常に大きな負荷となり、着手がやや遅れている状況である。その中でも、本研究と直接的な関連は低いものの、分裂文における研究の成果が得られており、その成果を国内学会で1件発表し、Proceedingsとして1編まとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
島の効果に関して、ラベリング分析を取り入れている文献及び研究を引き続き収集し、整理を行う。その上で、今年度得られた成果を取り入れながら、「島の内部からwh移動が許される・許されない」場合を説明できるラベリング分析を提案し、論文の形で公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、学会出張・学会発表等が全てオンラインとなったため、旅費や学会発表に関わる印刷費等を支出することがなかった。また、2019年度末(科研費採択前)に購入していた書籍を中心に文献収集を行なっていたこと、また学内業務として留学生の対応が優先され、研究計画に若干の遅れが生じていたことなどから、2020年度の物品費・書籍に関する費用等も発生しなかった。 2021年度に関しては、島の効果関連・英語学関連の研究書等の追加購入、論文執筆のための印刷費を中心として支出することを計画している。また、可能であれば学会発表・学会出張を行うことに伴う旅費の支出も計画している。
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