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2020 年度 実施状況報告書

「面白い」の起源:扁桃体の役割に注目したユーモア理解過程の理論と実証

研究課題

研究課題/領域番号 20K13034
研究機関武蔵野大学

研究代表者

中村 太戯留  武蔵野大学, データサイエンス学部, 准教授 (80409797)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード一貫性の監視 / 不調和の解消 / 行為の意味 / 行為者の意味 / 遊び状態 / 「保護されている」という認識の枠組み
研究実績の概要

令和2年度は、本研究が挑む「扁桃体のユーモア理解過程における役割は何か?」という学術的問いに対して、本研究の第1の目的、すなわち「コトバの内容を何らかの基準に基づいて「面白い」と評することに対応しうるユーモア理解の言語理論を提案すること」を推進した。
ユーモア理解において不調和の感知段階と解消段階という過程が関与し(Suls, 1972)、ユーモアを生じるその解消段階においてヒトの脳内にある扁桃体が重要な役割を果たすことが示唆されている(中村他, 2018)。このような過程の言語理論を構築するに際して、コトバの意味づけ論(深谷&田中, 1996; 田中&深谷, 1998)における「共有感覚」と「辻褄合わせ」という概念装置の再解釈をおこなった。共有感覚は「一貫性の監視」と再解釈した。そして、この一貫性が得られない状態がすなわち不調和の感知に相当すると考えられる。一方、辻褄合わせは不調和の解消に相当すると考えられる。また、意味づけ論では辻褄合わせをする対象として、「発話の意味」と「発話者の意味」を明確に区別しているという特徴がある。これを援用し「行為の意味」と「行為者の意味」という概念装置を導入することで、これまで不調和の感知段階のみで解消段階はないと考えられていた種類のユーモア(Nerhardt, 1970)も、行為者の意味の辻褄合わせをしていると捉えることで統一的に捉えることが可能となる。さらに、解消した不調和からユーモアを生じる条件として、心的エネルギーを捉える枠組み要因としての「遊び状態」(Apter, 1982)と、遊び状態を生じるための「「保護されている」という認識の枠組み」(Apter, 1992)が必須と考えられる。
このように、先行研究として提案されている概念装置をつなぎ合わせることによる新たな言語理論の構築をおこなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和2年度は、「コトバの内容を何らかの基準に基づいて「面白い」と評することに対応しうるユーモア理解の言語理論を提案すること」を目的として掲げたのに対して、先行研究として提案されている概念装置をつなぎ合わせることによる新たな言語理論の構築をおこなったため、おおむね順調に進展していると評価した。

今後の研究の推進方策

令和3年度は、本研究の第2の目的、すなわち扁桃体の神経科学的なつながりや役割と前述の第1の目的の言語理論との関連づけを検討し、必要に応じてその言語理論の改良も推進する。扁桃体は関連性感知の役割、すなわちポジティブとネガティブのどちらの情報も重要度を評価する役割を担っており、このことは後続の研究により支持されている(Ousdal他, 2008; Sergerie他, 2008; Bach他, 2011)。また、扁桃体は脳のほぼ全ての領域に出力投射をしており、またこれを利用して扁桃体は関連性感知をしつつ皮質ネットワークの機能を調和させており(Pessoa & Adolphs, 2010)、情動的な不調和解消(Levens et al., 2011)をしている可能性が示唆されている。今後の研究の推進方策として、このような扁桃体に関する知見を検討の手掛かりとして活用していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

令和2年度のコロナ禍により、対面による調査活動等をひかえたことによるものである。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大や収束の推移を見守りつつ使用していく予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 扁桃体の役割を射程に入れた「面白い」の言語理論の提案2020

    • 著者名/発表者名
      中村太戯留
    • 学会等名
      日本認知科学会
  • [学会発表] 文脈情報のない皮肉理解における韻律情報による意図的不調和の感知2020

    • 著者名/発表者名
      中村太戯留 , 松井智子 , 内海彰
    • 学会等名
      日本心理学会

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公開日: 2021-12-27  

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