研究実績の概要 |
本研究は、「扁桃体のユーモア理解過程における役割は何か?」という学術的問いに対して、言語学、心理学、そして脳科学の知見を活用しながら解明する試みである。 ユーモア理解とは保護フレーム(Apter, 1992, 2007)を有する関連性の感知(Sander et al., 2003)である。これが、本研究の第1の目的である、コトバの内容を何らかの基準に基づいて「面白い」と評することに対応しうるユーモア理解の言語理論(ユーモア理解の「見いだし」理論; 中村, 2022)の提案の骨子である。関連性感知の神経基盤としては扁桃体が重要な役割を果たす可能性(Nakamura et al., 2018)、保護フレームの神経基盤としては側頭葉前部、尾状核、前帯状回などが重要な役割を果たす可能性(中村, 2022)が提案されている。これが、本研究の第2の目的である神経科学的なつながりや役割からの考察や、第3の目的である心理学的ないし脳科学的手法を活用した前記の言語理論の神経基盤の解明のこれまでの結果の骨子である。 令和5年度は、この理論の精緻化に向けて、まず、保護フレームと感情語の関係性の検討を行った。前年度の結果である、ユーモア理解に関する行動データの解析をもとに抽出した保護フレームと整合する主成分と合わせると、保護フレームが機能する際に、ネガティブな感情語を含むユーモア表現があると、面白さが生じることが観測されており、前記の理論と整合することが確認された。次に、保護フレームや関連性感知という概念装置が既存のユーモア理論で取り上げられている事例を説明しうるかどうかの検討を行い、説明可能であることが確認された。
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