本研究課題では、日本語における和語・漢語・外来語などの語種が、それぞれどのような音声的特徴を持つのか、またそれらの特徴の違いが、日本語話者の心理的な語種の区別にどのような役割を果たしているのか、という問いについて、実験やコーパスから得られたデータをもとに検証した。 2023年度は、オンライン実験およびコーパス調査の結果を統計的および理論的に分析した。これにより、特に和語における連濁(複合語における濁音化)の規則性や拗音の音響特性、漢語における母音の分布、外来語における二重母音の出現頻度などを示し、それぞれの語種の特徴を明らかにした。また、日本語話者を対象として、単語を音声的特徴に基づき和語・漢語に区別させるような実験を行い、実際に話者が語種の区別を行っていることを示唆する結果を示した。さらに、語種の概念を拡張し、日本語やその他の言語の名前を分析することによって、固有名詞が独立した語種のように固有の特徴を持つことを指摘する研究を行った。 これらの成果は、国際学会にて発表した(4件)ほか、査読付き国際ジャーナル(2本)および国際学会誌(3本)にて関連の論文を出版した。また、研究を総括した論文を国際ジャーナルに投稿し(1本)、現在査読中である。 研究期間全体を通じては、新型コロナウイルス感染症の影響により当初予定していた実験・調査や国内外での学会活動を十分に行えず、2度にわたり課題の延長をすることとなったが、その中で感染症の影響を受けにくいオンラインでの実験調査やコーパス調査を積極的に実施し、最終的にはその成果を複数の国際学会および国内学会での発表(各計12件・2件)や、査読付きジャーナルおよび国際学会誌での論文(各計2本・5本)にて公表することができた。
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