研究課題/領域番号 |
20K13047
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研究機関 | 甲南女子大学 |
研究代表者 |
酒井 雅史 甲南女子大学, 文学部, 講師 (20823777)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 方言敬語 / 敬語運用 / 地理的分布 |
研究実績の概要 |
本研究の「西日本諸方言の敬語運用の特徴と方言間の影響関係(伝播による受容と変化のありかた)を対照方言学的観点から明らかにする」という目的を達成するため、既存資料を用いた研究成果について、研究発表(「日本語諸方言の敬語運用とその地理的分布」NINJALシンポジウム 「日本語文法研究のフロンティア ―日本の言語・方言の対照研究を中心に―」,2021年3月,於オンライン)および、研究論文(「読みがたりむかし話資料にみる存在動詞の分布」甲南女子大学日本語日本文学科『甲南国文』68号,pp.47-61)の執筆を行なった。 本年度の上記研究活動は、隣地調査によって収集した会話データによる結果を補完するものであり、研究計画に含まれる内容である。コロナ禍の影響により隣地調査を実施することがかなわなかったが、「対照方言学的観点から敬語運用の地理的影響関係を明らかにする」という本研究の目的に対しては、対者待遇/第三者待遇場面で尊敬語を使用するか否かによる類型では,敬語運用には周圏論的分布が認められないことを指摘し、敬語使用が活発とされる西日本の中でも特に一般形の使用が主である方言のあること,特定形が多く使用される方言の中でも方言形が用いられるか標準語形が用いられるによって,標準語受容の在り方を探ることができるのではないかということについて述べるた。また、敬語運用に関わる項目である存在動詞の地理的分布について執筆した論考では、東日本でイルが,西日本でオルが主に用いられるという東西対立の分布が確認できること、アルの出現が東日本に偏ること、地理的分布は肯定文・否定文ともに同様の傾向がみられることなどを指摘した。これらは本研究の目的に照らして一定の成果が得られたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
会話データを用いて敬語運用の地理的影響関係を明らかにするという本研究の目的達成のために必須の隣地調査が、コロナ禍の影響により実施できなかったことが、大きな要因となっている。一方で、本年度は隣地調査の結果と並行して用いる予定であった既存資料のデータを用いた研究活動を行い一定の成果が得られたと考えるため、進捗状況は(3)とした。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍に関する社会情勢等も踏まえつつ、可能な限り研究計画に沿って隣地調査を行えるよう尽力するが、状況を見極めつつ既存資料を用いた研究も進め、目的達成に大幅な遅れが出ないようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、隣地調査等の旅費が発生しなかったため。社会状況を見極めつつ、調査を実施し旅費として支出する予定である。
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