研究課題/領域番号 |
20K13048
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
黒崎 貴史 山口大学, 大学院東アジア研究科, 東アジアコラボ研究員 (60836386)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | クナイ / 同意要求 / 若者語 / 新用法 / 方言 / 社会言語学 / 音調 |
研究実績の概要 |
本研究は,西日本方言話者である若年層を対象に,同意要求表現「クナイ」の用法や音調的特徴について,その他の同意要求表現「ジャナイ」「ポクナイ」と比較し,文法的・音調的特徴を明らかにすることを目的としている。 「クナイ」の使用実態について調査した結果,動詞・形容詞・形容動詞語幹・名詞を前接要素として持つことが判明した。形態については,基本形,クネ形,タ形,丁寧形の4つが確認できた。このうち基本形とクネ形が主に用いられ,丁寧形が最も用いられにくいことが判明した。このことから,親密な関係性において用いられる形式であるといえる。タ形について,動詞の基本形が前接要素となる場合は未来に関する事柄を述べ,動詞のタ形が前接要素となる場合は過去に関する事柄を述べると考えられる。 地域的差異として,東に比べ西の地域の方が〈話し手の感情〉を示す場面において「クナイ」が用いられにくいことが判明した。この背景には,話し手の感情の表出の仕方が東日本方言と西日本方言とで異なることが影響していると考える。また,ほとんどの地域で〈話し手の判断〉を述べる場面において客観的な根拠に基づいていなくても「クナイ」が用いられることも判明した。使用実態について地域による差異はあるものの,西日本において文末詞化が広範囲で広がっている形式であるといえる。この結果は,共著論文(2021年)において公表した。 形態論および語用論的な観点から調査を続けることで,「クナイ」の実態がより明確化でき,文法研究への寄与が期待できる。また,話し手の意識やコミュニケーションスタイルとの関連性も確認できた。文法論的視点だけでなく,社会言語学的視点で調査・分析を続けることで,新たな手法で同意要求表現の整理を行うことが出来るだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度より私立高校での勤務が決まり,その業務の忙しさや,学会や研究会の日程と勤務日が重なったこともあり,調査の準備や成果発表の時間の確保が難しかった。また,新型コロナウイルス感染の流行も影響し,音声収集のための調査が行えなかったことも原因である。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に「クナイ」に関するアンケート調査及び分析と考察を行い,その用法や形態論的特徴に関して新たな知見を得られた。それに加え「ジャナイ」「ポクナイ」の用法に関してもアンケート調査を行い,分析と考察を行う。また,コロナの感染状況によっては感染対策を講じつつ,音声収集調査も行い,音調的特徴と文法的特徴の関連性について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
音声収集調査のための費用,および学会参加等での費用として当該年度に使用する予定であったが,コロナウイルスの感染拡大に伴い調査の実施と参加ができなかったため,機材購入費や旅費等が次年度使用額として生じてしまった。 次年度には,感染状況を考慮して音声収集調査を行うための費用として用いる。また,鮮度松の研究報告書作成のためにも用いる。
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