研究課題/領域番号 |
20K13048
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
黒崎 貴史 山口大学, 大学院東アジア研究科, 東アジアコラボ研究員 (60836386)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 同意要求 / モダリティ / 否定疑問文 / 新語 / 社会言語学 / 語用論 |
研究実績の概要 |
本年度は,昨年度に行った分析の再検討を行った。また,その他の同意要求表現「ジャナイ」「ポクナイ」との比較も行えなかったため,先行研究を踏まえ再整理を行い,新たなアンケート調査票の作成も行った。 昨年度の調査結果により,「クナイ」はタ形との接続が認められたが,実際の日常会話での使用例を耳にすると,タ形接続の「ジャナイ」「ポクナイ」「クナイ」はそれぞれ用法に差異があるように思われる。そこで,寺村(1984)『日本語のシンタクスと意味Ⅱ』,尾上(2001)『文法と意味Ⅰ』,定延(2016)『煩悩の文法[増補版]―体験を語りたがる人びとの欲望が日本語の文法システムをゆさぶる話』で分類されたタ形の用法に基づいて例文を作成し,その自然さについて内省的に判断を行った。それにより,「ジャナイ」と「クナイ」は話し手の判断に対して確信度が強く,「ポクナイ」は確信度が弱いという仮説が生まれた。さらに,その判断の根拠が,「ポクナイ」→「ジャナイ」→「クナイ」の順に,主観性が強くなるのではないかという仮説も生まれた。 さらに,実際の使用例を耳にすると,音調の面でも違いがあるように感じられる。「ジャナイ」の場合,前接要素のアクセント核はそのまま残り,「ポクナイ」の場合,1モーラ目の「ポ」にアクセント核がくる。しかし,丁寧形「デスカ」が後接した場合,「ポクナイ」のアクセントは平板化する。一方「クナイ」は,様々な語と接続してもとびはね音調となる。 しかし,これらは仮説にすぎず,本来であれば調査を行って検証するところだが,新型コロナウイルスの流行に伴い,思ったように調査ができず,内省による分析に留まってしまった。来年度は,速やかにアンケート調査と音声収集調査を実施し,本年度で得た仮説の検証を行う。それにより得られた成果についても発表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
音声収集調査を行う予定だったが,前年度に続き新型コロナウイルスの影響で実施できなかった。また,昨年度の収集データの再分析および同意要求表現の整理に時間がかかってしまい,アンケート調査を行うことができなかった。 以上のことが,進捗状況に影響している。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で示した仮説に基づき,新たにアンケート調査票を作成したため,速やかにアンケート調査を行う。山口県若年層を対象に収集したデータが既にあるため,その分析にとりかかる。 また,新型コロナウイルスの感染状況を見て,可能であれば速やかに音声収集調査も実施する。 これらによって得られた成果を口頭発表および論文の形で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ボイスレコーダーと外付けHDDは,音声収集とそのデータ保存のために購入した。PCは,これまで使用していたPCが経年劣化により故障してしまい,分析や資料作成および論文執筆ができなくなったために購入した。 しかし,音声収集調査を行うための移動費や謝礼のための費用を前年度より引き継いでいたが,新型コロナウイルスの影響で実施できず,その分の余りが出てしまった。そのため,科研費の延長申請を行った。それが受理されたため,その分を今年度に引き継ぎ,音声収集調査の費用および研究報告書の作成費用に当てる。
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