研究課題/領域番号 |
20K13056
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宿利 由希子 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (10844649)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 情報操作 / 動作の表現 / 日本語社会 / 「悪人」キャラ / 悪印象 |
研究実績の概要 |
23年度は、①日英比較のための文献調査、②オンラインアンケート調査の作成と実施、③情報操作およびことばと人物像の関係に関する先行研究の整理を行った。 ①では、中国語やロシア語との比較同様、日本語の笑い方の表現は英語に比べ、「どのように笑うか」だけでなく、「笑っているのはだれか」までをも特定する、使用範囲の狭い表現であり、且つ表現自体や笑う主体に抱かれる印象も大きく異なることが明らかになった。 ②では、「仮説1:日本語社会は、ことばと特定の印象との結びつきが他言語社会より強い」「仮説2:日本語社会は、発信者が悪印象を伴うことばで対象のふるまいを表した場合、受信者が対象に抱く印象が悪化する度合が他言語社会より大きい」「仮説3:日本語社会は、発信者が悪印象を伴うことばで対象のふるまいを表した場合、受信者が同様に悪印象を伴うことばで対象を表現する確率が他言語社会より高い」という3つの仮説を検証するため、22年度に行った悪印象を伴う動作の表現の日本語アンケートに笑い方の表現を加え、中国語・ロシア語・英語のアンケートを作成した。アンケートはオンラインサービス Survey Monkeyを用い(ロシア語版のみ同サービスが使用不可のためGoogle Formを使用)、日本語版と中国語版の調査は完了した。ロシア語版および英語版は23年度の終わりから24年度初めにかけて実施する。中国語との比較において、仮説1~3が支持される結果を得た。 ①および②で得た知見は所属学会等にて発表予定である。本研究の成果は最終的に書籍にまとめる予定であり、③の部分については執筆を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度の報告に書いたとおり、2022年度実施予定だったロシア語・中国語・英語の各母語話者を対象とした意識調査の作成および実施が、所属先での新型コロナウイルス感染対策等による通常業務の増加により困難となった。2023年度は2022年度の多忙が原因で体調を崩したこともあり、遅れていた意識調査の実施が加筆した日本語版と、中国語版のみとなり、ロシア語版、英語版の実施は24年度にまたがることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、まず2023年度に実施予定だった、仮説2・3に関するロシア語・英語の各母語話者を対象とした意識調査を早急に実施する。意識調査は、日本語・中国語同様、アンケートアプリを用いたオンライン調査の形式で行う(英語版はオンラインサービス Survey Monkeyを用い、ロシア語版のみ同サービスが使用不可のためGoogle Formを使用する)。調査結果については、日本語学会、社会言語科学会等の所属学会の学会雑誌および所属先紀要に投稿予定である。また、2023年度に行った日英比較のための文献調査と日本語版アンケートの結果は、ヨーロッパ日本語教師会大会第27回ヨーロッパ日本語教育シンポジウムで発表する。調査結果は秋頃を目処に書籍にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は、2022年度に実施予定だったアンケート調査の作成および日本語版・中国語版の実施がずれ込んだほか、所属先業務の増加により体調を崩したため、予定どおり研究を進めることができず、その結果予算も予定どおりに執行できなかった。 出張旅費について、2024年夏に対面開催の第27回ヨーロッパ日本語教育シンポジウムに参加予定であり、成果発表の出張旅費として使用する。 調査協力者謝金は、英語版用のみ1名500円を(時給1000円換算、円安の影響等を勘案しつつ)計上する。この際、所属先の分類に従い「その他」での計上となる。ロシア語版は、Survey Monkeyがロシアで使用不可となり、渡航も困難なため、Google Formを用い無償で協力者を募ることとなったため計上しない。その他、書籍の印刷代および郵送代を計上する。
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