今年度は、琉球大学附属図書館に所蔵されている『論語集注』の訓法について、日本に残存する訓点資料(計23種)と比較し、琉球の漢文訓読の実態について検討を行った。その結果、琉球には日本とは異なる訓法で漢文訓読が行われていたらしいことが明らかとなった。従来は、琉球では日本の訓法の一つである文之点(文之玄昌による訓法)が流通していたとされてきたが、これについては近年疑問点があることが指摘されてきた。本研究により、必ずしも琉球に文之点だけが流通していたわけではないことがより一層明確になった。 また、琉球大学図書館の『論語集註』と同版とされる東洋文庫内岩崎文庫の『論語集註』の原本調査も行った。その調査によって、東洋文庫の『論語集註』の方が刷が早いらしいことが明らかとなった。両本は使用する訓点や訓法に小異があるが、殆ど同じ読みを有している。これは、琉球における独自の訓法の広がりを示す資料の一つになると考える。今後、『論語集註』の訓法と、『四書體註』の訓法の全面的な比較を行い、琉球の漢文訓読の場における訓法についてさらなる検討を加える予定である。 さらに、琉球において重視されていたといわれている文之点の資料(大魁本『四書集註』寛永二年点)の紹介も行った。これにより、近世期の重要な訓法である文之点の参照が容易になった。
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