研究課題/領域番号 |
20K13061
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
安原 正貴 茨城大学, 教育学部, 准教授 (10738834)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 再帰的反使役 |
研究実績の概要 |
英語には他動詞の再帰的反使役用法は存在しないというのが先行研究での一般的な考え方だが、英語にも類似の表現が存在することが指摘されている。本研究は、コーパスと英語母語話者の内省判断を活用しながら、英語において再帰的反使役用法を持つ他動詞はどのようなものかを明らかにするとともに、英語の再帰的反使役用法を可能にする意味的条件を明らかにすることを目的としている。当該年度は主に、他動詞の再帰的反使役用法に類似した現象(Virtual Reflexive Construction (VRC)と呼ばれる構文)を取り上げ、どのような動詞がVRCに生起でき、この構文がどのような特性を持っているのかを調査し、学術論文として発表した。VRCとは This problem solves ITSELF. (この問題は(実質的に)ひとりでに解ける) のような構文であり、形式的には他動詞の再帰構文であるが、意味としては、その出来事の実現が容易であることを表す表現である。VRCは無生物主語と再帰目的語をとり、多くの場合はvirtually (実質的に)などの副詞を伴うか、再帰目的語に強勢が置かれる。無生物主語が再帰的に自分自身に働きかけているように表現していることから、VRCには比喩的な解釈も関わっている。一般に、反使役自動詞と交替できる他動詞はVRCに生起しにくいという傾向が存在する。本研究では、VRCは一種の再帰的反使役表現としての機能を果たし、反使役自動詞が許されない他動詞が反使役的事象を表すことを可能にしていると論じている。この分析は現代アメリカ英語を扱った大規模コーパス(Corpus of Contemporary American English)を用いた量的調査からも裏付けられている。本研究の分析は、英語における再帰的反使役表現の一端を明らかにしたものであると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本務校での校務や教育活動等の業務が当初予定していたものよりも多忙となり、本研究課題の遂行に当てる時間を当初の予定よりも減らさざるを得なくなった。 そのため、当初の予定よりも本研究課題の遂行がやや遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、反使役的な意味を表す英語の再帰的他動詞表現の特性の調査を行うとともに、他言語との比較対照研究をさらに進めていく予定である。特に、日本語における類似表現の調査を内省判断やコーパスを用いて遂行していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により学会等の現地開催が中止となり、旅費を想定していた研究経費の使用計画が無くなったため、次年度使用額が生じることになった。次年度も現地 開催の研究学会は少なくなることが想定されるため、旅費に当てることを想定していた研究経費の一部は、文献調査等の費用として活用し、本研究課題をさらに 進展させる予定である。
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