研究実績の概要 |
本研究の主な目的はチョーサーの単語を調べる際に迅速に、且つ客観的に単語の包括的な情報を提供し、チョーサーの言語や作品の魅力を伝え、特に日本国内において、より多くの人々にチョーサー研究への道案内をすることである。その目的を達成するために、本研究はすべてのユーザーが無料でアクセスできる検索ツール(以下「本ツール」と言う)「A Chaucer Lexicon」を構築している。 昨年度は「本ツール」のデータ整理・入力のほか、学会での発信にも注力した。特に8月の「The 2023 Hiroshima International Conference」での発表は、New Chaucer Societyの会長のStephanie Trigg、前会長のAnthony Balerに大きく評価され、メルボルン大学のTrigg教授が担当する授業でも「本ツール」が使われ、Baler氏のSNSでも紹介された。 期間を通して見ると、本研究は計画当初の限定されたユーザーしか使えないデータベースソフトウェアの案を改良して、誰もが無料にアクセスできるウェブサイトの構築に成功した。そして、ユーザーが自由に検索結果をカスタマイズできる機能なども付け加え、「本ツール」の学術的価値を高めた。 新型コロナウイルス感染症の影響はあったものの、無事にチョーサーの『トロイルスとクリセイデ』の全形容詞および『カンタベリー物語』の一部の形容詞(まだ未公開)を入力することができ、公開中の形容詞は2,345個で、総データは120万ワードを超えた。 データベースの構築という性質もあって、論文等の成果物にはつながりにくいが、期間中、国際学会を含めた5件の口頭発表をし、「本ツール」を積極的に発信してきた。
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