研究課題/領域番号 |
20K13065
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
本多 正敏 宮崎大学, 教育学部, 准教授 (20554827)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 対比焦点/非対比的情報焦点 / 極性焦点 / 累加焦点 / so倒置文/so too倒置文 / 場所句倒置文 / 直示的倒置文 / 引用句倒置文 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「焦点移動には、情報訂正を主眼とする対比焦点移動に加えて、非対比的情報焦点移動が存在する」という新仮説を英語に拡張し、後者の焦点移動の存在を支持する独立した経験的証拠を探ることである。3年目は、当初の予定を変更し、so too倒置文、場所句倒置文、そして、引用句倒置文を事例として取り上げ、これらの文の形式と情報構造の対応関係を考察し、論文2本を執筆した。 まず、文頭のsoが累加焦点詞tooを伴う、so too倒置文(例:So too can Mary.)に関しては、COCAを活用したコーパス分析に基づき、当該形式の情報構造上の特性を考察した。その結果、so too倒置文において、①動詞句の省略を伴う場合、累加焦点の対象は倒置助動詞の後に生起する名詞句(代名詞ではなく、固有名詞や一定の情報量を持つ普通名詞を伴う名詞句)になる点、そして、②動詞句の省略を伴わない場合(例:So too can Mary play the piano.)、累加焦点の対象は動詞句内の文法要素になる点、の2つが明らかになった。本研究の成果は、累加焦点詞tooを伴うか伴わないかに関わらず、so倒置文は非対比的情報焦点(厳密には、極性焦点と累加焦点)を伴う言語現象であるという位置づけをさらに明確にするものである。 次に、場所句倒置文の情報構造について、場所句倒置文の一種とされる直示的倒置文(例:Here is your lunch box.)を取り上げて考察し、当該現象の一部の事例に関しては、文頭の直示的副詞が非対比的情報焦点機能を担いうる可能性を論じた。また、引用句倒置文(例:"I am so happy," said Bill.)における文頭の引用句は新情報を担うという先行研究の指摘(例:松原(2019))を踏まえ、当該現象も非対比的情報焦点移動によって派生される可能性を論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、3年目は、1年目と2年目の事例研究の成果を統合しながら、焦点移動の新仮説の下で見えてくる英語の焦点関連現象の位置づけと概観を提示するとともに、その研究成果と先行研究における他言語の焦点移動現象を比較検討することで導かれる帰結を探る計画を立てていた。しかし、事例研究として取り上げる予定だった言語現象を再精査する必要性が生じたことに加え、2年目には所属研究機関の変更とコロナウイルスの感染拡大に伴って、インフォーマント調査を中心とする研究手法を大きく変更せざるを得ない状況となった。その結果、2年目に行う予定であった英語の場所句倒置文の事例研究を3年目に実施することとなり、また、長期休業期間中に実施する予定であった研究活動を所属研究機関の業務との関連で見送らなければならない状況が生じたため、事例研究を取りまとめる研究が十分に実施できず、全体の研究計画に遅れが生じた。 しかし、コーパスを利用した研究手法を中心として、so too倒置文、場所句倒置文(/直示的倒置文)、そして、引用句倒置文の3つを事例研究として取り上げ、これらの現象には非対比的情報焦点移動が関与する可能性を示すことができた。その研究成果を論文2本に取りまとめる等、一定の成果に結びつけることができた。従って、現在までの進捗状況は、「(3) やや遅れている。」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、1年目から3年目にかけて実施してきた事例研究の成果を統合させながら、必要に応じて事例研究を継続しつつ、非対比的情報焦点移動が関連する英語の語順交替現象の統語的・意味的特性を包括的に捉えるための統語的メカニズムを提案する。また、本研究の成果と先行研究における他言語の焦点移動現象の研究成果を比較検討することで得られる経験的・理論的帰結を明らかにするとともに、他の研究関連領域への示唆や波及効果を探る。 研究成果は研究会や学会等で発表し、フィードバックを得る。また、最終年度は、研究成果を論文にまとめる研究活動を中心とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、3年目に、1年目と2年目の事例研究の成果を取りまとめるための包括的研究を実施する予定であった。しかし、2年目に実施する予定だった事例研究を3年目に遅らせて実施したことに加え、研究活動を実施する予定であった長期休業期間中に所属研究機関の業務に対応する必要性が生じたため、事例研究を取りまとめる研究を実施することができなかった。 上述の事情から補助事業期間の延長を申請し、4年目に事例研究の成果を取りまとめるための研究活動を実施することについて承認をいただくことができた。従って、次年度は研究を遂行するために必要な研究図書を購入するための費用と執筆論文の英文校正のための費用が主に生じる予定である。
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