最終年度は、①so...that文の統語的・意味的特性を取り上げた研究と②中学校英語検定教科書における情報構造の取り扱いに焦点を当てた研究に取り組み、それらの成果を研究論文として公表した。 まず、①に関して、so倒置文(例:So do I.)には非対比的焦点移動(肯定極性焦点移動)が関与するという昨年度の研究成果を踏まえ、程度強調詞soが形容詞や副詞に付加して倒置を引き起こす事例(例:So rough was the sea that this ship couldn't enter harbor.)の考察に向けた予備的研究を実施した。具体的には、文頭への移動を伴わないso...that文の統語的・意味的特性を考察し、程度強調詞soには数量詞繰り上げに準じるLF移動が適用されるという先行研究の議論を踏まえ、so...that節が動詞句領域内で構成素を成す場合と文レベルで構成素を成す場合があることを明らかにした。この成果を踏まえ、今後の研究プロジェクトを通して、文頭への倒置を伴うso...that文が非対比的焦点移動によって派生される可能性を検証したい。また、本研究プロジェクトを通して、英語の語順交替現象から非対比的焦点移動の存在を裏付ける証拠を提出してきたが、それらを統合した研究を進める上で、極性焦点の統語的具現化とその位置付けについて独立した考察が必要であることが判明したため、今後の研究に譲りたい。 次に、②に関して、本プロジェクトの研究成果を英語教育に応用するための予備的研究として、与格交替を事例として取り上げ、中学校英語検定教科書における情報構造の取り扱いの特徴と指導上の留意点を考察した。その結果、中学校英語検定教科書を使用しながらこれらの構文の使い分けを指導する際、与格構文を基底とするwh疑問文とその回答のパターンが複雑になる点に留意する必要性があることを論じた。
|