研究課題/領域番号 |
20K13067
|
研究機関 | 名古屋外国語大学 |
研究代表者 |
高橋 佑宜 名古屋外国語大学, 外国語学部, 講師 (90844283)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 英語史 / 歴史語用論 / as for構文 |
研究実績の概要 |
2021年度は、中英語から初期近代英語におけるas for NP構文の発達について形式―機能の対応付けの観点から調査を行った。
調査の背景には次の点が挙げられる。現代英語の文法書においてas forは「話題の移行」や「話題の提示ないしは移行」を行う際に使用されると記述されている。また、他の文法書においてもas forは同様の働きがあるとされており、左方転移の一種としての記述もなされている。また、as for NPを、明示的に話題化を行う機能を持つ構文として位置づけている研究も見られる。現代英語の文法書に記述されているような形でas for NPが使用され始めるのは、古英語辞書DOE (Dictionary of Old English) や 中英語辞書MED (Middle English Dictionary) を精査すると中英語期からと推測することができ、発達の過程について通時的に考察する余地があると思われたからである。
そこで、2021年度は、as for NP構文の働きについて、(1) 文中での生起位置、(2) NPと主語の照応関係、(3) 接続詞との共起関係という3つの点から、通時コーパスPPCME2 (Penn-Helsinki Parsed Corpus of Middle English, 2nd edition) とPPCEME (Penn-Helsinki Parsed Corpus of Early Modern English) を対象に調査した。その結果、as for NP構文は中英語後期から初期近代英語の初頭にかけて確立したことを明らかにした。研究成果は、2022年3月にオンラインにて開催された、英語史研究会第31回大会にて報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画はおおむね順調に進捗しているといってよい。本年度は、as for NPを中心に形式―機能の対応付けの観点から調査を行った。As for NPの確立は、中英語後期から初期近代英語期の前半に生じた。この時期に、新情報と旧情報を切り分ける統語的な手段を失っていった代わりに、一種の「治療法」として話題化構文の一つとしてas for NPが発達したと考えられる。今後の課題として、as for NP構文のより細かな分析や他の構文の通時的変化の考察が挙げられる。V2統語の衰退と共に生じる情報導入構文の発達の考察を通じて、言語体系の変化ならびに機能―形式の対応付けに迫りたい。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として次の2点が挙げられる。(1) as for NPの関連構文に調査の対象を広げる。フランス語といった外来語由来の表現使用も見られるため、言語接触の影響も考慮しながら、より包括的な記述を目指す。(2) また、as for NP構文の発達の背景には、中英語後期に生じた言語体系上の変化(V2語順の衰退)が関係していると考えられる。英語史上における話題化を行うための統語的な手段の出現について、類型論的な言語変化の観点から考察を進めたい。
|