研究課題/領域番号 |
20K13085
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
井下田 貴子 早稲田大学, 日本語教育研究センター, 准教授(任期付) (80735994)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 母音 / 半母音 / 拗音 / 日本語学習者 / 中国語母語話者 / 音声知覚 / 音声生成 |
研究実績の概要 |
母語として一度獲得された音声カテゴリーは変更が難しく、非母語話者が学習言語の異なる音声カテゴリーにある音素を習得するのは容易ではない。特に、非母語話者は「学習言語の文脈」において、「学習言語の音素」を「母語の音素」で代用することが多々あり、このことが原因で、発音の誤りや異聴の可能性が高まることはよく知られている。 先行研究では、中国人日本語先行研究では、中国人日本語学習者が発話する日本語の半母音/ju/と/jo/において、混同が見られることが報告されている。前後の文脈に頼ることができない語彙に日本語の半母音/ju/と/jo/が含まれる場合、コミュニケーション場面で問題が生じることが想定される。 本研究では、中国語を母語とする日本語学習者を対象として、日本語の半母音、拗音の音声生成および音声知覚について、その音響特徴を明らかにすることを目的としている。2021年度には、2020年度同様、聴取実験に用いる合成音声作成のため、音響特徴の把握することを目的に予備調査として生成調査を行った。対象者は中国語母語話者で日本語上級者である。 本研究では対象を日本語の半母音、拗音としているが、段階的に調査する必要があることから、まずは半母音を含む語彙および文を中心に、前後の音環境を変えて録音を行った。比較対象とする中国語は、日本語の語彙と同様の漢字を用い、一定のアクセント型を持つ語彙に限定した。音響分析の結果、先行研究と一致する傾向が見られたものの、中国語における音響特徴量において異なる傾向が観察されたため、先行研究と完全に一致するとは言い難い結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響によりにより、調査に関わる施設の利用制限、調査協力者の来日不可、という状況下にあったため、調査の進度が難航した。一定数の調査協力者の確保が難しい状況であったため、当初の予定より遅れている。そのため、2021年度は2020年度と同様に調査協力者を限定し、個人内の音響特徴量について分析を行うことに注力した。2022年度は引き続き、追加で音声録音を実施し、聴取実験に向けて合成音声刺激の作成を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、2020年度、2021年度に予定していた合成音声刺激の作成、中国語母語話者を対象として追加で生成調査(音声録音、音響分析)を行う予定である。音響分析が終了した時点で合成音声刺激を作成し、半母音、拗音の順に聴取実験を開始する。また、これまで半母音に限定して生成調査を行っていたが、拗音の生成調査も始める予定である。生成調査および聴取実験の結果については、適宜、成果を学会等で報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、以下の事態により差額が発生した。1)生成調査、知覚実験が行えなかったことにより、謝金が発生しなかったため、翌年度に繰り越しとなった。2)学会がオンライン開催になったため、出張費が発生しなかった。 2022年度には、当初計上した額に1,235,520円を加えた額を研究費として使用する予定である。余剰額の主な支出は、調査および実験参加者への謝礼、実験に必要となる備品購入、学会参加における旅費、雑費などである。
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