今年度は、まず、助動詞「ものだ」の分析をすすめた。そして、研究期間全体の成果として、研究対象とした「もの」を構成成分に持つ機能語全体に共通する使用文脈の特徴と用法、どのような目的で用いるのかという表現意図の分析を行った。 「ものだ」の分析については、これまでの機能語の分析と同様に、直前・直後に出現する表現と使用文脈の特徴から文脈での用法を分析した結果、それらは次のようなものであることがわかった。 【「ものだ」の使用文脈の特徴と用法】①「Pものだ」は話し手が異質・例外と認識する事態に対し、それと対立する本来・通常の事態Pを対比的に示す、②話し手が異質・例外と認識する事態について「Pものだ」で話し手の評価・感想を表す 次に、「もの」を構成成分に持つ機能語全体に共通する特徴については、逆接系の接続助詞の機能語であれば上述の「ものだ」の①の使用文脈・用法で用いられ、順接系の接続助詞の機能語と終助詞の機能語であれば「ものだ」の②の使用文脈・用法で用いられることがわかった。 さらに、これらの機能語全体に共通する表現意図として、言表の対象とする事態が本来あるべきではない、通常と違っている、大部分と違っている、理解・納得しにくい、といった異質・例外の事態であるという話し手の評価・判断を表すために用いられるという分析結果に至った。 研究対象とした「もの」を構成成分に持つ機能語は従来1文レベルでの事態の特徴などから用法が述べられてきたが、この研究をとおして、それぞれの機能語が用いられる文脈のなかでの用法、機能語全体の用法の体系、機能語全体に通底する表現意図があきらかになった。この研究成果により、日本語教育において学習者の運用に役立つ説明が可能になるだろう。
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