研究全体の目的は、(1)熊本県内の外国人労働者散在地域において技能実習生に対する言語サポート、及び本人との交流体制を構築すること、(2)地方におけるトランスナショナルな状況を日本人大学生に対し可視化し、彼らが実習生との交流を通じて異文化コミュニケーションのスキルを身につけ、地域文化を見直す経験を促進することである。 2020年8月より開始した10組のペアの活動について、8か月を経過した2021年4月の時点で評価を行い、その結果、活発に継続したペアとそうでないペアがあり、活動が停滞・中止している場合は、ペアを変えたり、日本人大学生に活動を促進するような指導を行った。また、そのうち実習生の希望する3組については、日本語教員養成課程の履修生の学生を中心に、ビデオ電話による日本語の練習を行い、実習生の日本語の能力向上に一定の成果を得た。活動開始から1年後の2021年8月には、活動全体の評価を行うと同時に、北海道、岡山などで実習生のサポートに携わる研究者と情報交換を行い、特に岡山の大学が主催するオンラインの国際交流シンポジウムにおいて、研究協力者の実習生と共に本研究の成果を公表し、多くの関係者の方から貴重な助言をいただく機会を得た。また、この活動と並行して昨年度より行ってきた熊本県内の企業と実習生を対象とした職場の言語環境に関わる聞き取り調査の実施と分析を進め、課題を明らかにした。 大学生のキャリア面からの成果では、今回のサポート活動を日本語教育の実習として行い、進学・就職などのキャリアに結び付けるケースも複数見られ、大学のHPでも学生の活動が取り上げられ紹介された。コロナ禍において直接的な国際交流の機会が減る中で、地域に住む外国人の存在を知り関わりをもつことによって、外国人の眼を獲得し、地域文化を再発見できたことは、大学生の成長を促す貴重な学びとなった。
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