研究課題/領域番号 |
20K13098
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研究機関 | 神戸常盤大学短期大学部 |
研究代表者 |
高橋 由希子 神戸常盤大学短期大学部, 口腔保健学科, 教授 (10582778)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 外国にルーツをもつ子ども / オーラルサポートモデル / 口腔保健教育 / ハンドブック |
研究実績の概要 |
海外では、18歳以下の子どもを対象に、政府所属の歯科衛生士や歯科看護師が口腔保健教育を担っており、その効果について報告されている。国が治療費を全て負担しているところもあり、子どもたちの口腔管理は、年齢や学校により切れ目なく行われている。 一方、日本では、小学校から高校には養護教諭が各学校一名ずつ配属されているが、未就学児にいたっては、保護者が自覚を持って定期的に歯科に通院させない場合には、口腔保健教育を受ける機会も得られない。日本の乳幼児歯科健診には、集団健診と、個別健診があり、実施方法については、市町村により様々な状況にある。そのため、健診後のフォローアップには特に規定がなく、現場に委ねられているのが現状であり、地域によって支援の状況にも違いがでてくる。特に、保護者に口腔に関する知識が少ない場合には、口腔衛生や食べ方、発音などの口腔に関する習慣の獲得が子どもの生活やコミュニケーションに影響を及ぼすことにも気が付かない。 また、両親のいずれかが外国籍である「外国にルーツをもつ子ども」は対象になっておらず、全国で急増しているにも関わらず、これまで彼らの子育てを支援しようという動きはなかった。そこで、彼らの子育てに対する不安や悩み、口腔衛生や食べ方等を母語で聞き取り調査を行う。そして、彼らが日本で健康に暮らすために必要な支援を明らかにする。その上で、母語がそれぞれ異なる外国人にも簡単でわかりやすい日本語、すなわち、やさしい日本語で 「外国にルーツをもつ子どもと親のための口腔保健教育ハンドブック」をPCDAサイクルに沿った評価手法を用いて実施し、開発する。これは外国にルーツをもつ子どものオーラルサポートモデルとして様々な地域に応用することができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年時は、本学附属の子育て総合支援施設「KIT」と「ときわんモトロク」で月に一回ずつ計17回「歯っピー相談会」を行った。「歯っピー相談会」は歯科医師及び歯科衛生士が利用者に対し、やさしい日本語で作成した問診票を使用し、口腔に関する困りごとについて聞き取りを行った。「KIT」と「ときわんモトロク」の利用者は0歳から3歳未満の日本人および外国にルーツをもつ子どもと親で、困りごとは歯の生える時期、歯磨きの開始時期、食事に関することなど、多岐にわたっていた。個々の困りごとに歯科医師及び歯科衛生士が対応し、必要に応じて、歯科受診を勧めた。令和3年度は新型コロナウイルス「オミクロン株」流行により、「KIT」と「ときわんモトロク」の利用者が減少した。そのため、利用者の聞き取り数が伸び悩み、項目ごとの分類に進むことができていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度(令和2年度)および令和3年度は、「歯っピー相談会」を開催し、利用者の困りごとの聞き取り調査を行った。しかしながら、令和3年度は新型コロナウイルス「オミクロン株」流行により、「KIT」と「ときわんモトロク」の利用者が減少した。そのため、利用者の聞き取り数が伸び悩んだ。 今年度(令和4年度)は、本学附属の子育て総合支援施設に加え、1歳6か月児健診や3歳児健診にきた外国にルーツをもつ子どもと親に対し、問診票を使用した聞き取り調査を行う。利用者の問診表を分析し、困りごと、口腔、食べ方、発音等に分類する。分類後、問題解決につながる口腔保健指導の内容を作成する。利用者の知りたい情報を盛り込み、やさしい日本語を使用した口腔保健教育ハンドブックを開発する。ハンドブックの内容および日本語が理解できるかどうかについて、数名の協力者に対して調査しながら、修正を行う。その後、開発した口腔保健教育ハンドブックを用いて、本学の子育て支援施設および1歳6か月児健診や3歳児健診の来場者の外国にルーツをもつ子どもと親の試用協力者に対して歯科保健指導を行い、その評価を得る。最終的な口腔保健教育ハンドブックは試用協力者の意見をPCDAサイクルに沿った評価手法を用いて開発する。 外国にルーツをもつ子どものオーラルサポートモデルとして様々な地域で応用できるように修正を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度(令和2年度)はコロナ禍において様々なイベントが中止となった。令和3年度は新型コロナウイルス「オミクロン株」流行により、「KIT」と「ときわんモトロク」の利用者が減少した。また、1歳6か月児健診や3歳児健診も一部延期となり、再開後も部外者の参加は禁止となり、整理用タブレット、資料収集用パソコン、記録用デジタルカメラの購入は差し控えた。外国にルーツをもつ子どもと親に対する聞き取りやインタビュー等のためのコミュニティの視察・調査も困難であった。 最終年度となる令和4年は、ワクチン接種が急速に進み、新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」を取り入れていくこと仮定し、早い時期に備品および消耗品を積極的に購入する予定である。また、外国にルーツをもつ子どもと親のコミュニティへの視察を並行して行う予定である。
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