研究実績の概要 |
今年度は児童を対象に様々な英語語彙知識テストを実施したことで, 外国語活動における語彙知識の習得状況について調査した。調査1では, 小学校中学年の児童に対して「音声→意味」選択テスト(英語の音声を聞いて, その意味に合う正しい絵を選ぶテスト)を実施した。その結果, 語彙の音素数が少ないほど, 語彙の正答率が高くなることが明らかになった。また3年生と4年生で正答率に差がないことが明らかになった。つまり, 小学校中学年で導入される英単語は3年生の段階で既に多くの児童によって知られており, 1年間の外国語活動では英単語の「音声→意味」知識は大きく伸びないことが示唆された。 さらに, テストの正誤パターンから, 児童がある特定の英単語を知っている確率を算出する予測モデルを構築した。このモデルによって, 児童の「学年」と「音素数」という要因から, ある特定の英単語がどのくらいの割合の児童によって知られているのかが予測可能になった。 調査2では, 小学校高学年を対象に「音声→文字」再生テスト(英語の音声を聞いて, それに対応する英語の綴りを書くテスト)と「意味→文字」再生テスト(イラストを見て, それに対応する英語の綴りを書くテスト)を実施した。その結果, 外国語活動, および外国語における言語活動だけでは文字を書く技能は習得されないことが示唆された。 調査3では, 小学校高学年を対象に「音声→文字」選択テスト(英語の音声を聞いて, 対応する綴りを選択するテスト)と「意味→文字」選択テスト(イラストを見て, 対応する綴りを選択するテスト)を実施した。その結果, テストの成績に影響を与えるのは言語活動よりも英単語が持つ特徴(語数, 頻出度, カタカナ語など)が大きく影響していることが示唆された。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスにより予定されていた学会はすべてオンライン開催となったため, 出張費を使用することがなかったため差額が生じた。今年度は学会の対面実施か否かに応じて予算を使用する。対面実施されれば, 予定通りに予算を執行する。オンライン開催となれば, 研究室の設備を充実させるために, 研究用図書や備品に割り当てる予定である。
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