研究課題/領域番号 |
20K13105
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
矢元 貴美 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 講師 (40830089)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 母語・継承語 / 子ども / 教育 |
研究実績の概要 |
2022年度には参与観察、インタビュー調査、資料収集を進め、フィリピンにルーツを持つ子どもに対する母語・継承語教育に関して学会発表を行った。参与観察はフィリピン語教育を実施している学校計8校で各1回または複数回実施した。インタビュー調査は2021年度に引き続き、フィリピン語の母語・継承語教育に携わる学校・団体の関係者、および、在日フィリピン人支援団体の関係者、計14名に対面またはオンラインで実施し、実態とニーズの把握に努めた。 実践現場の課題として、学習内容を一律に決めることはできず、子どもの出身地、家庭内言語、フィリピンやフィリピン語に関する知識や運用能力、学習動機といった背景によって個別に対応する必要があることや、教材の入手に苦労すること、学習意欲を持たせる難しさ等が明らかとなった。一方、学習を通して、子ども自身や保護者の国に誇りを持てる、同じルーツを持つ者同士の関係を築けピアサポートにつながるといった成果も見られる。言語自体の維持・向上というニーズは高くなく、子どもが自信を持てることや、親子のコミュニケーションに役立つことが重要であるため、内容面では、日常生活で用いられる語彙や会話、フィリピン各地の様子や文化紹介に重点を置き、興味を持って楽しく学べるようなものが望まれる。 2021年度に引き続き、日本から入手可能であった、子どものフィリピン語およびフィリピン諸語の学習用にフィリピンで出版されている文献資料や、フィリピンの初等中等教育用教科書も収集し、フィリピン国内での学習内容や題材を把握することができた。フィリピン国外で出版されている、フィリピンにルーツを持つ子ども向けの書籍も入手し、言語のみならず、子どもたちに伝えることが望まれている価値観や習慣も把握することができた。日本で暮らすフィリピンにルーツを持つ子どもたちを対象とした教材作成においても参考になるものであった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症拡大にともなう移動の自粛の必要や感染の懸念への配慮から延期せざるを得なかった、2020年度と2021年度に計画していた調査を優先して進めたため、研究計画を順次繰り下げている。当初の計画より遅れてはいるものの、徐々に進めているところである。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度には、日本国内において、子どもと保護者を対象とした調査を継続し、母語・継承語教育の意義と課題、彼らのニーズを把握するとともに、国内調査の結果を分析する。2023年度前半にはフィリピンにおいて言語教育の実態調査と資料収集も実施し、入手した資料や現地の言語教育の状況も参考にしつつ、教材作成に着手する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2022年度までに予定していた日本国内におけるインタビュー調査の一部、および、フィリピンにおける調査が、新型コロナウイルス感染症拡大のために延期を余儀なくされた。また、参加予定であった学会大会の一部がオンライン開催となった。そのため、予定していた旅費、協力者に対する謝礼、調査データを整理するための人件費などが未執行となった。2023年度に実施予定の調査および研究成果の発表のための経費に使用する予定である。
|