研究課題/領域番号 |
20K13106
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研究機関 | 会津大学 |
研究代表者 |
野北 明嗣 会津大学, コンピュータ理工学部, 准教授 (30868815)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フォニックス / 英語の発音指導 / 母音一覧表 / 子音一覧表 / 中国語の発音指導 / 英語の綴り指導 / レッスン動画 / 英語教員のプライド |
研究実績の概要 |
英語の発音指導には、日本語の五十音表のような一目瞭然の音の一覧表もなく、プロソディーの指導も中国語教育と違い非常に分かりにくく、非母語話者用の綴りの指導法も確立されていない。本研究では、中国語教育を参考にし、先行研究で多くの日本人が知らないとされる英語の発音と文字の、体系的な指導の動画全35レッスンを作り、レッスン前と後で発音がどれだけ上達したかを実証する。 1~9:母音一覧表の練習、10~14:母音の綴りルール基礎編、15~23:単独子音、25~29:注意すべき音の組み合わせ、13、24、32:重音と軽音のしくみ、30~31:母音のつづり上級編、33~34:トーンとイントネーションのしくみ、35:間違えやすい単語 1年目はまずレッスン動画を完成させることに専念した。5人の講師に協力していただき、現在35レッスン中31レッスンの動画が完成。残り4つは編集のみで、あと4日ほどで完成予定。例:レッスン33の動画 https://youtu.be/nhSm75FtMa0 2020年9月までには13レッスンまでできており、会津若松市教育委員会の了承を得て、神指小学校の6年生のクラスで、1回の授業で1レッスンのペースで、12レッスンまで動画を流していただいた。12レッスンを見る前と見た後で、単語リストを児童16人に音読してもらい、録音した。音声の分析はまだ始めていない。 研究中の新たな発見として、市の教育委員会の話では、もし中学でもこの発音教材を導入すると、約9割の中学英語教員は、自分たちの発音が間違っていたことが生徒にバレてしまうのが耐えられないので、教材導入には否定的だった。つまり英語教員は生徒の英語の上達より、自分のプライドを優先する可能性がある。これでは教材の質の良さだけを証明しても実用化はできない。そこで英語教員の精神的な壁を取り除くためのアンケート調査も必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
英語の教材には、言語学的根拠のある内容のレッスンに加え、インコのアニメキャラクターを自分で描き、数々の語呂合わせの歌、そしてBGMも自分で作曲しているほか、動画作成アプリFinal Cut Proが予想以上に重く遅いことがあり、動画の作成に予想以上に時間を費やしている。 市の教育委員会は、上記の、正しい発音教材は日本人英語教員のプライドを傷つけることに加え、そもそも英語をしゃべる機会のない日本で実用的な英語教育が必要かという疑問から、教材の導入を渋っているため、なかなか教材を現場で試せないでいる。 また今年度に入り市内の感染者が急増したことから、現在は学校訪問ができない。これらのことから、なかなか35レッスン全てを試す環境が見つかっていない。動画が完成次第、手を打たないといけない。 小学生の他に、小学校教員7人のレッスン前の単語の音読のデータも録音したが、教員は多忙であることに加え、コロナウイルス感染者が増え勉強会も開催できないことから、レッスン後のデータが録音できない。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、まずは残り4レッスンの動画の完成。 次に、もう一度教育委員会と交渉し、芦ノ牧温泉付近の小学校で35レッスン試せないかお願いしてみる。 既にあるデータを分析し、学会でも発表していく。 一方で、小中学校の英語教員に、正しい発音教材が教員の発音の悪さを暴露しプライドを傷つけてしまうことに対し、どのようにすれば、教員のプライドを傷つけず、教員も生徒も満足できるシステムが構築できるか、アンケート調査を行う。 ただ、現在のところ県内、市内のコロナウイルスの状況が思わしくなく、被験者集めがスムーズに行えるまでにまだ時間がかかると予想される。そこで被験者集めができない間、後述の"ルビ"(SoundSpelling)を表示させるウェブアプリケーションの質を高めることにする。現在はルビを表示させるだけだが、音節ごとの音声を載せるという、今までの英語の電子辞書にはない(中国語辞書には当然のように付いている機能)試みを取り入れるため、音声を録音してくれる北米英語母語話者を雇う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初から1年目に使用額が多く割り当てられていたが、1年目は教材作成に時間を費やすため、当初からここまで研究費を使う予定がなかったため。加えて、前述の通り、研究が予定より遅れたため。また、コロナウイルスの影響で旅費が大幅に少なくなったため。教材開発も、主に大学内の教員、及び私の配偶者にお願いしたため、人件費をかなり抑えた。その分を、ルビを表示させるためのウェブアプリケーションの機能の向上に回せる。 今年度、来年度は、データ分析とデータ収集のため、リサーチアシスタントの給与や謝金を多く使うため、人件費をかなり必要とする。又、被験者が増えれば、動画のDVDもかなりの枚数を焼き増しすることになる。コロナウイルスが落ち着けば、旅費も必要となる。
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備考 |
英語の綴りを本研究の"ルビ"に自動変換できるウェブアプリケーションを開発中。
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