研究課題/領域番号 |
20K13107
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
須田 孝司 静岡県立大学, 国際関係学部, 教授 (60390390)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 日本人英語学習者 / 主語の獲得 / 主語と主題の区別 / 段階的発達 / 指導の影響 |
研究実績の概要 |
本研究では,ごく初期段階の日本人英語学習者が英語の主語をどのように習得していくのか検証することを目的としている。理論的枠組みとして生成文法理論を利用し,日本語と英語の構造を比較したうえで,日本人英語学習者が主語名詞句が移動するために必要とされる英語の時制辞(Tense)の素性を適切に習得できるのか調査を行った。主な検証すべき研究課題は以下の3点である。 (1)1人称の人称代名詞のある等位接続名詞句(A and I)と3人称の等位接続名詞句(A and B)が主語の場合,3単現-sが使われている英文の文法性を適切に判断することができるか。 (2)複数の数素性を持つ3種類の名詞句(語彙:people,形態:friends,統語:A and B)が主語の場合,その英文の文法性判断に差があるか。 (3)中学生と大学生は人称素性や数素性をそれぞれどのように扱い,英文の文法性を判断するのか。 実験では,3単現-sに関連する8タイプの英文を使い,中学生と大学生からデータを集めた。実験の結果,中学生は主語名詞句を人称代名詞Iと「その他」に分け,「その他」の名詞句が使われている場合はその名詞句を3人称とみなし,3単現-sのある文を正しいと判断すること,中学生はA and Iのような1人称が使われている等位接続名詞句も3人称とみなし,さらに3人称の複数名詞に対しても3単現-sが必要であると判断すること,大学生になると人称素性は正しく扱うことができるようになるが,peopleのような語彙的複数に複数の数素性を与えることは困難であること,がわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究目的であった小学校における調査は,コロナ禍ということでなかなか協力を得られることができず実施できなかった。しかし,英語を本格的に学び始めたごく初期段階の日本人英語学習者として,多くの中学生からデータを集めることができた。また,日本人英語学習者の主語の習得の段階的発達と日本語の主語と主題の知識の影響を検証するため,中学生に加え大学生を対象とした実験も行い,本研究テーマを検証するために必要なデータを3年間で集めることができた。現在分析した日本語の主語と主題の区別に関するデータをもとに投稿の準備を行っており,その後も英語の主語と日本語の主語・主題の知識について発表を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
英語学習を本格的に始めたばかりのごく初期段階の英語学習者として,これまで日本の中学生から英語の主語と日本語の主語と主題の区別に関するデータを集めることができた。今年度はその研究成果の一部を学会や論文として発表する予定である。さらに,今後は教育の現場で働いている先生方と話し合いを行い,中学生が誤って理解している名詞句の3人称の概念や人称と数の関係性について説明し,英語の学習初期段階においてどのように日本語と英語の主語の違いについて指導すべきか,また主語を導入するときには名詞句の人称と数について何をどのように指導すべきかなどを提案したい。さらに,そのような指導を行った前と後で,中学生の主語名詞句の理解がどのように変化していくのか検証し,その検証結果を学会や論文として発表することを考えている。
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