研究課題/領域番号 |
20K13114
|
研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
中條 純子 東京電機大学, 未来科学部, 講師 (10640295)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 教材開発 / 情意面 / 発音 |
研究実績の概要 |
本研究は、英語学習者に有効な英語発音教材開発を目的とするインストラクショナルデザイン(ID)の実践分析である。第二言語習得研究分野において、言語習得における音声面の重要性は広く認知されている。しかし、カリキュラムや教材、教授法は未発達である。そのため、英語発音の教授は教材に依存する傾向が強い。結果、教材の有効性が教授効果の成否に大きく影響する。したがって、効果的に教育現場で導入できる教材の開発の必要性が高まる。ただし、効果的な教材開発には、学習者の発音習得過程の解明が必須である。 英語習得における音声面の重要性は広く認知されている。しかし、カリキュラムや教授法、教材は未発達である。この状況に対し申請者は、2010年~2015年に日本語母語話者の大学生を対象に、学習者の情意面に有効な英語発音教材開発のためのインストラクショナルデザイン(ID)を行った。その結果、学習者の情意面に働きかけると学習者が英語口頭コミュニケーションに自信を持ち、さらに意欲的に英語を使いたい、学びたいと思える教材となることを明らかにした。 本研究では、この知見を応用し、さらに教材の導入利便性と学習効果を高めるための教材開発を行う。特に焦点を当てたのは、日本語母語話者の大学生を対象とした自己モニター活動の開発である。学生の身近にあるスマートフォンなどの音声認識機能をメディアとする自己モニター活動を設計し、その学習効果を検証する。その過程で英語音声習得における学習者の情意面の変容過程とその特徴を探る。日本人英語学習者の英語口頭コミュニケーション能力獲得につながる、英語発音学習への情意面での向上的変容を確認し、その構造を明らかにする。教材の提示と音声習得過程の解明により、日本人英語学習者の英語口頭コミュニケーション能力獲得と英語使用への向上的変容を目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の影響で、研究活動が制限された状況の中ではあった。しかし、文献研究を基にした音声認識機能を用いた教材に焦点をあてた、第一次教材開発を1年目前期に終了した。そして、1年目後期より開発教材を半期導入した。導入方法は、オンデマンド式である。授業支援システムWebClassを用いて、ワークシート、動画、音声等の資料配布を行い、期日までに課題提出を行うという形式で導入した。授業対象は、大学1年生、2年生。教養科目としての英語の授業で実施した。 開発教材の有効性は、学生協力者によるアンケート調査より検証した。アンケート調査は主に次の3点において実施した。1.教材導入前の英語の音声知識や英語に関する情意面の事前調査、2.教材導入時の教材に活動に関する複数回の中間調査、3.教材導入前の英語の音声知識や英語に関する情意面の事前調査事後調査である。 COVID-19の影響により、研究計画を変更せざるを得なかった点がある。第1次開発教材の有効性を検証するための対面授業による導入の見送りである。大学の教室内でのインストラクションに重きを置いて有効性の高い教材開発を目標としていたが、結果、オンデマンド教材としての導入となった。そして、この影響により、後に続く、導入後のデータの検証評価そして、教材の改訂版のための資料収集も実施を見送ることとなった。 本研究は第2次サイクルのインストラクショナルデザインによる教材開発である。COVID-19により計画を変更せざるを得なくなったが、その副産物があった。影響第1次サイクルの教材開発時に課題となっていた、授業における開発教材の有効性検証時、「教員要素」と「教材要素」の分離である。オンデマンド教材での教材導入にて有効性を検証したため、「教材要素」を独立して検証する機会となった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、COVID-19の影響が収束するのを期待しつつ、以下の3点に注力し、計画を進める。1.収集データの分析、2.教材改定、3.改訂教材の授業への導入である。1年目の後期にオンデマンド授業で収集したデータを分析し、その結果を基にして、第2次教材開発を行う。そして、その教材の中で検証の必要な部分を取り出して、再度授業に導入し、その有効性を検証する。 完全対面授業の再開時、第2次教材を改訂した最終版を授業で導入し、教材全体としての有効性を以下の4点において総括的評価を行い検証する。1.開発教材の導入により、学習者の知識の獲得にどのような変容が認められるか。2.開発教材の導入により、学習者の技術面の向上にどのような変容が認められるか。3.開発教材の導入により、学習者の情意面の向上にどのような変容が認められるか。特に、英語の発音、英語、英語学習、口頭コミュニケーション領域における価値・関心・態度での向上的変容は認められるか。4.開発教材1・2の導入により、学習者は音声認識機能を用いたモニター活動を、学習効果や利便性をどのように自己評価するか。開発教材の有効性は、学生協力者によるアンケート調査より検証する。第1次教材開発と同様の方法である。 最終の総括的評価は、アンケート調査に加え、開発教材の教材内の1つの活動として組み込まれている動画撮影における学習者の音声動画記録も用いて検証をする。複数国の英語の英語母語話者と英語日母語話者による学習者の英語発音の評価を行い、通用性を調査する。調査に使用するのは、教材導入前と後の2回において録画された学生の発音動画である。検証対象音素について事前、事後のパフォーマンスの比較評価を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、次の2項目の予算執行ができず、予定していた予算の執行を次年度以降に繰延せざるをえなかった。 1項目は、教材開発のためのフィールドワークによる資料収集予算である。海外渡航と現地での撮影協力者への謝礼を予算化していた。しかし、海外渡航の制限により計画は中止となった。 2項目は、対面授業の有効性検証のための協力者への謝礼予算である。対面授業による開発教材の導入が実施できなかったことが理由である。教室内での学生の活動の様子を被験者観察することにより、日本語母語話者大学生の活動の取り組みが記録できる。対面授業での教材導入実践を通して収集したより一貫したデータを検証するための計画変更である。2項目関する研究は次年度以降、COVID-19が収束時に行う。
|