本研究は、効果的な英語音声教育教材開発という観点からの日本語母語英語学習者の発音習得過程を明らかにした。学習者の情意面に焦点を当て、音声習得過程を分析しながら教材開発を進めた。その結果、学習者による2つの技術の習得が発音習得のカギを握る事実を解明した。それは、自動音声認識を用いて自分で自分の英語発音を分析し、意思疎通を阻害する音を突き止める技術(セルフモニター力)とその音を自分で修正できる技術(セルフリペアー力)である。そしてセルフリペアーした音を自動音声認識を用いてその成果を確認できる一連の学習サイクルを構築した。セルフリペアーがうまくいかない場合は教材として提示されている動画、音声、そして、明示的な発音の個々の音の説明(イラストも含む)を再度学習してセルフリペアーの必要な部分(音素や音環境)を突き止め、弱点を強化しながら技術を身に付けていく。そしてこのプロセスを記録として残すため書き込んでいく。そのプロセスの振り返りも学習の効果がある。その結果、書き込みをしながらの自己分析により能動的に自己分析できるシステムが構築できた。これは、自立した学習者を育成する教材システムの成立であり、従来の英語教育にはない、新しいスタイルの教材となった。研究の成果は、『音声認識で学べる英語発音学習帳』(Learning English Pronunciation with Speech Recognition: A Fun Drill Book)(2024年3月刊行・ひつじ書房ISBN978-4-8234-1228-8)として出版の運びとなった。そして、学習者の情意面に焦点を当てた、明示的かつ能動的、分析的である学習者主体の音声指導法と教材のモデルの開発知見は、校種を問わず広く追加研究・応用が可能となり、研究の進んでいない音声技能習得の研究や口頭コミュニケーション面への研究に寄与する。
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